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2022-07-20 00:00
(連載2)リスクに満ちたウクライナ復興資金問題
倉西 雅子
政治学者
復興支援債の発行が相次ぐ一方で、ウクライナに対して多額の融資を行ってきた金融機関は、悲観的な見通しを示しています。例えば、現時点にあってウクライナへの融資が21億ユーロにも上っている欧州復興開発銀行のチーフエコノミストは、「ウクライナ経済は、停戦が実現しなければ、今年20%のマイナス成長になる見通し」と述べています。言い換えますと、ウクライナへの貸し付けが焦げ付いたり、ウクライナ関連の債権が不良債権化し、同行の財務状況が悪化することを懸念しているのです。プーチン大統領は、ウクライナ危機の長期化を示唆しており、戦争が長引けば長引くほど、復興の見通しがつかず、復興資金も膨れ上がることでしょう。
金融機関の動きはかくも‘ちぐはぐ’で不自然なのですが、少なくとも、「ルガノ宣言」にあって復興資金の使途に関する透明性が明記されたのも、同資金が、過去の債務返済に充てられる事態を予測していたからなのでしょう。このままでは、‘ババ抜き’になってしまうからです。ウクライナ復興債の行方も危ういのですが、ウクライナのシュミハリ首相は、こうした不安を払拭するかのように、ある提案を行っています。それは、復興資金は、ロシア政府、プーチン大統領、並びに同国の新興財閥(オリガルヒ)からの没収財産で賄うべきというものです。
親ウクライナ諸国の政府は、対ロ制裁措置として、既に自国内のロシア資産の凍結を行っています。推計によればロシアの全海外凍結資産は、「3000億~5000億ドル」ともされており、必要とされる復興資金の半分ほどは賄える計算となります。日銀も、ロシアから預かっている円建ての4~5兆円の資産を凍結しました。しかしながら、仮にこの案を各国政府が実行した場合、一体、何が起きるのでしょうか。
現状でさえ、ロシアは、大統領令によってサハリン2における日本国の権益を接収しようとしています。プーチン大統領やラブロフ外相等の個人資産、あるいは、民間財閥の資産のみならず、日本国政府がロシアの円建て外貨準備を没収し、それを全額外貨に換金してウクライナに提供したとなりますと、ロシアに対して、対日攻撃の口実を与えることにもなりかねません。同リスクは、ロシア資産の凍結を実施した他の西側諸国にも共通しており、第三次世界大戦を引き起こしかねないのです。ウクライナ復興支援問題は一筋縄ではゆかず、あらゆる側面を考慮しつつ、慎重にも慎重を期すべき大問題であると思うのです。(おわり)
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