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2022-07-19 00:00
(連載1)リスクに満ちたウクライナ復興資金問題
倉西 雅子
政治学者
ロシアによる軍事介入を受ける以前から、ウクライナは、巨額の対外債務を抱え、資金繰りに苦しむ国でした。’ウクライナ危機’とは、かつてはこの財政危機を意味していたのですが、今では、国際紛争にその席を譲っています。ところが、今般、スイスにおいて開かれたウクライナ復興国際会議は、今後、二つの’ウクライナ危機’が合流してしまう可能性を示しました。同会議に出席したウクライナのデニス・シュミハリ首相によれば、同国の復興には100兆円を超える資金を要するそうです。
同国際会議では、「ルガノ宣言」が採択されており、復興の中心的な推進国をウクライナに定めています。この宣言によれば、復興資金も当事国であるウクライナが負担すべきということになるのですが、戦争被害に対する賠償金の問題は、本来、ウクライナとロシアとの間において締結される講和会議、並びに、講和条約の締結を以って解決されるべき問題です。ウクライナが戦勝国となれば、同国は、ウクライナ側が受けた被害額に応じた賠償金をロシアから得ることとなります。その一方で、ウクライナが敗戦国となったとしても、賠償請求権を放棄しない限り、国際法にあっては対ロ請求権は認められています。
もっとも、後者の場合には、ロシア側が賠償金の支払い要求に応じる可能性は極めて低く、ウクライナ復興資金は、重くウクライナの肩にかかってきます。しかも、既にデフォルト寸前の状況にありましたので、ウクライナが自力で100兆円もの資金を自国の歳入から拠出できるはずもありません。となりますと、海外からの資金調達を当てにするしかないのですが、ウクライナ財政の危機的な現状を見れば、同国への融資には、各国政府も民間金融機関も二の足を踏むことでしょう。国債の発行という調達手段もありますが、高利回りの外貨建てのウクライナ債を発行しようものなら、即、デフォルト宣言となりかねません。
こうしたウクライナの厳しい財政事情からしますと、ハイリスクを承知で官民の海外金融機関から融資を受けるか、各国政府からの’災害復興支援’に類する形で無償供与に期待するしかなくなります。前者については、既に欧州評議会銀行が2800億円規模のウクライナ復興債を発行する一方で、日本国のJICAも「平和構築債」の名称で200億円分のウクライナ支援債を発行する旨を公表しています。JICAの説明によれば、ウクライナ政府に対する有償資金協力事業に充てるとしていますが、こうした政府系の金融機関による債権発行は、ウクライナ債発行リスクの肩代わりとして理解されるかもしれません。(つづく)
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