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2022-07-07 00:00
(連載2)外交好きの岸田首相と国民の距離感
岡本 裕明
海外事業経営者
アメリカはバイデン氏自身の低支持率もありますが、むしろ彼の政権幹部の評価が今一つなのだと思います。そして冒頭に述べたようにアメリカは今後、更に混沌とする可能性を秘めています。オーストラリアでは労働党が政権を取ったため、中国への一定の宥和が起きる可能性は否定できません。インドは自国中心主義です。6月23日にBRICS会議でインドのモティ首相がそこにいました。ついこの前にはクワッドで日本にいました。つまりインドを巡る綱引き合戦とも言えます。それに対してインドは気にも留めていません。「俺の国はどうも魅力があるようだ」ぐらいでしょう。とすれば台湾と友好的な関係があり、韓国との雪解けの可能性が出てきた中で対中国、ロシアの橋頭保として日本は地政学的に支援されやすく、注目も浴びやすいはずです。
岸田氏は安倍元首相ほど力強いポリシーと色濃さはないけれど菅氏のような不器用な感じもありません。つまり諸外国首脳からすれば議論しやすい上にちょっとおだてれば岸田首相は踊るのです。海外では「検討します」ではなくすぐに「協力します」と判断が早く、約束しお金もバラまいてくれます。相手にとってこれほどイージーなディールもないのです。私の見る岸田首相のスタイルは「いい顔外交」です。八方美人ではなく、仲良しクラブを作り、クラブメンバーとそうではないところで差をつけるタイプで、外交においては水を得た魚のように今後、更に力をつけていくとみています。ただ、私が気になるのはその際に国民との距離感が出やしないか、という点です。首相は国民と共に踊るのが原則ですが、調子づいて国民のことをほったらかしてしまっては岸田氏にとってせっかくのチャンスが水の泡となります。外交で国民期待との温度差が大きかった好例が日露戦争講和条約の際の小村寿太郎主席全権でした。どうも岸田氏は外交になると急に走りやすくなる傾向が見受けられるのでここは「しっかり」と自身を抑えるべきは抑えてもらいたいものです。
国民意識は正直、コロナで2年以上内政にしか向いておらず、ウクライナでの戦争もここにきて報道こそすれど遠い国の出来事、他人事な印象がしています。そもそも日本人は島国で外交には無頓着な気質がありました。そのなかで、コロナからの病み上がりの段階で国内経済の正常化路線を築き、国民が安心安全に暮らせる明白な方向性の提示をせずして外交や隣国問題にも取り組めば「あぶはち取らず」になりかねません。故に岸田首相は選挙後に閣僚組織を再編成し、国内をきちんと取りまとめてもらう体制を強化しながら得意の外交で成果を上げる戦略にしないとこの温度差はどんどん広がりかねません。
岸田首相には、諸外国に多額の援助などのコミットメントをしている中で国内からは「私たちも苦しい」「これだけ頑張っているのに」という声があることにもっと耳を傾けてほしいものです。もしも選挙に対して声が上がるとすれば「外交は選挙のポイントになりにくい」という批判でしょう。内政と外交のバランス感覚をうまくコントロールしないと政権支持率は徐々に悪化しかねません。(おわり)
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