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2022-06-29 00:00
ロシアの「ユーラシア主義」と現実
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
ロシアのウラジミール・プーティン大統領の「頭脳」と呼ばれるアレクサンドル・ドゥーギンという学者については日本でも報道されている。ドゥーギンの「ユーラシア主義」という考えを基にしたシナリオ通りにプーティン大統領が動いているというものだ。ドゥーギンの主張するユーラシア主義とは、ユーラシア大陸の多くの部分を占めるロシアが中国も含めて、ヨーロッパからアジア地域まで支配する帝国を構築するというものだ。これは現状、「偉大なロシア帝国」という歴史を捻じ曲げた妄想に基づいた戯言ということになる。
ロシア帝国、その後のソ連は、版図は巨大であり、その軍事力も強大だった。ソ連時代にはある時期までは経済力も高かった。しかし、「世界を支配するロシア帝国」という時代はなかった。また、これからもそれはないだろう。人口が少なく、経済力も弱く、世界各国への影響力も限定的だ。一方、中国は経済力、軍事力、世界への影響力を見れば、ロシアを大きく凌駕する。歴史的に見ても、中国の歴代王朝、帝国は世界を支配するほどの力を持っていた。また、世界初の世界帝国はモンゴル帝国である。現在にモンゴル帝国を復活させるとすれば、それは中国であって、「タタールの軛」という言葉もあるように何百年も支配されてきたロシアではない。
ロシアは「ヨーロッパに裏切られてきた」という強い考えがあるのだろうと私は考える。ヨーロッパが華やかできらびやかで、様々な近代的な価値観やイデオロギーを広めてきて、それらを受け入れてみたら大失敗で、その最たるものが共産主義と革命ということになる。ロシアはそれらによって汚された、ロシアらしい発展を阻害されたという思いがあるのだろう。この点は理解できる。そのために、「偉大なロシア帝国」という幻想を持つのも理解できる。そして、反西洋としての動き、ロシアの影響圏にあるべきウクライナがヨーロッパに奪われることの危機感からウクライナ戦争を起こしたということにもなる。
ヨーロッパ諸国はロシアを恐れながら馬鹿にしてきた。そして、ヨーロッパの一員として迎え入れるということをしてこなかった。ロシアの天然資源に依存しながら威張り腐って、「ロシアは国家体制から変革しないとね、とても私たちの仲間だとは言えませんよ」という舐め腐った態度を取ってきた。ヨーロッパの反ロシア感情は理解できるが、冷戦が終わった段階でNATO(旧ソ連を標的とした軍事同盟)を解体できなかったことが現在の状況を生み出したとも言える。ロシアはヨーロッパを離れ、中国のジュニアパートナーとなって、一帯一路計画に協力することで生き延びる、これしかない。
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