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2022-06-15 00:00
(連載2)「骨太の方針」で「野放図な財政」明確に
中村 仁
元全国紙記者
多くがこのような具合です。「野放図な財政」の一因は、日本には独立財政機関がないことにあります。他国では独立機関が政治や行政に対して中立的な立場から、分析や提言をしています。先進主要国(G7)で、独立機関がないのは日本だけです。主要国グループのOECDは独立機関の設立を提唱してきており、2000年には8か国だったのが現在は約40か国に達しております。韓国(03年)、カナダ(08年)、英国(10年)、豪州(11年)、独仏(13年)、伊(14年)などです。欧州債務危機の教訓から13年、ユーロ圏では独立機関の設立を義務化しています。
日本でも21年6月、「独立財政機関の設立を考える超党派の議員の会」が設立され、林芳正議員(現外相)も代表発起人の一人です。声は上がったけれども、具体化の動きは全くありません。せめて「骨太の方針」に書き込むべきところです。岸田首相らが財政規律を意識はしていても、安倍元首相が積極的な財政出動を重視し、高市党政調会長らが手足となって動いていますから、無理な話なのでしょう。
独立財政機関を設置さえすれば、財政問題が解決するというものではありません。しっかりした専門家を集め、その提言、勧告を政治が尊重しなければならない格付けが必要です。通常ならば、中央銀行が経済財政に対して中立的な立場をとり、金融政策を通じて、財政にも影響を与える。つまり金利が上がれば、国債金利も上がり、利払い費が増えることによって、野放図な歳出膨張・国債発行に歯止めがかかるはずです。その中央銀行が安倍首相、黒田総裁の手によって、政府と一体化してしまい、財政政策に影響を行使すべき機関がなくなってしまいました。ですからますます独立財政機関の設立が求められるのです。 「骨太の方針」では「財政健全化の旗は降ろさず、これまでの財政健全化目標の取り組む」と言いつつ、他方で「状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」と書き、骨抜きにしてしまいました。
朝日新聞の社説は「防衛費をはじめとする歳出の拡大に歯止めがかからない。歳出の拡大だけをいうのは、財政運営の名に値しない」です。主要紙はほぼ同様の主張です。そこまで言いながら、財政に対する強力なチェック機関の設置を提言しないのか不思議です。 G7やOECDが構成国、加盟国に対し、独立財政機関の設立を義務づけたらよいと思います。そうでもしないと、日本は動きそうにありません。あるいは、金融財政が破綻状態に陥り、国際的な信認を回復する証の一つとして、独立財政機関を遅ればせながら設置する。そのどちらかになるのでしょうか。(おわり)
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