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2022-05-27 00:00
(連載2)国際関係を’封建的’にするNPT体制
倉西 雅子
政治学者
この結果、安全保障上の脅威に晒されている非核諸国は、‘核の傘’を求めて核保有国と軍事同盟を結ばざるを得ない状況に置かれることとなります。両者の間で軍事同盟が結ばれるとなりますと、核保有国は、非核国に対して‘核の傘’によって安全を保障する代わりに、非核国は、核保有国を盟主とした陣営の一員としてその戦略に従う関係となります。形式上対等であっても、非核保有国は有形無形の‘奉仕’をもとめられます。そして、この縦型の関係は、主君が家臣に対して軍事力を以ってその領地を安堵する代わりに、家臣は主君の戦いにはせ参じる義務を負う、中世の封建制度と類似しているのです。
核兵器出現以前の対等な関係における軍事同盟にあっては、締約国間の軍事的な支援は条約において条件や規模などが定められ、いざ戦争となれば、相互に援軍や武器を提供するという形態が大半を占めておりました。しかしながら、核保有国を中心としたブロックが形成され、ブロックが相互に対峙するとなりますと、戦略の一本化と一体的な運営が求められるようになります。第二次世界大戦にあっては、連合国側に共同作戦の走りが見られるものの(日独伊同盟はあったものの、実際には枢軸国諸国は‘ばらばら’であった…)、核時代の今日にあっては、アメリカの戦略に全ての同盟国が参加する形となりましょう。そして、仮に、アメリカブロック対中露ブロックが次なる世界大戦の対立軸となった場合、たとえ核が使用されなかったとしても、その戦いは過去に類を見ない程、凄惨を極めることでしょう。
NTP体制が現代にあって‘封建体制’を固定化し、ブロック間対立としての第三次世界大戦への道を敷いているとすれば、その見直しは急務なように思えます。アメリカにとりましても、NATO加盟国や同盟関係の拡大は、対中露戦略においては有利となるとはいえ、その反面、核の傘の提供対象国の増加を意味しますので、自国が核攻撃を受けるリスクも上昇します。
将来的には、NPT体制の解消により国家間の対等性を回復した後に、必要とあらば、改めてそれに代わる軍事同盟を締結するという方法もあるのかもしれません。理想論としては、もっとも望ましい方向性は、平和的な解決を可能とする司法制度等の整備といえましょうが、それを具体的に論じる段階にはないのもまた事実です。何れにしましても、この体制は、国際関係に’封建的’な構造が生じる問題が内在しており、人類が未来永劫にわたって維持すべきものとも思えないのです。(おわり)
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