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2022-05-26 00:00
(連載1)国際関係を’封建的’にするNPT体制
倉西 雅子
政治学者
今日、核兵器という存在が、戦争の勝敗のみならず、国際体制の決定要因となっている現実があります。核兵器が戦況を一変させる’切り札’となるとする認識は、先の戦争にあって、連合国のみならず、劣勢におかれていた枢軸国にあっても核兵器の開発競争に凌ぎを削っていた歴史からも伺えます。そこには、先に同兵器を手にした側が戦勝国になれるとする確信があったからです。そして、実際にそれが広島と長崎に対して使用されたとき、核兵器は、凄まじい破壊力のみならず絶大なる抑止力をも持つこととなったのです(その抑止力により現に、以後凡そ70年にわたり世界大戦は発生していない)。
核兵器とは、いわば人類が手にしてしまった’魔物’なのですが、それ故に、人道的な見地から核の廃絶が訴えられるようになりました。核拡散防止条約も核廃絶に向けた流れの一つなのですが、現実には核兵器が’魔物’であるために、NPTは当初の目的とは異なる作用を国際社会にもたらしたように思えます。
どのような作用であるのかと申しますと、それは、現代における国際社会の’封建体制化’です。第一次世界大戦以来、普遍的な国際組織としての国際連盟や国際連合の設立もあって、国際社会は、主権平等の原則を基調とするフラットな体制に移ったかのように思われています。世界地図から植民地は姿を消し、保護国という形態も過去のものとなりました。国際法は各国の権利を等しく保障し、国際秩序は、位階を特徴とする縦型から横並びの並列型へと転換したのです。
表面的にはフラットな世界への移行が進む一方で、第二次世界大戦後の国際社会の現実を見ますと、国連には常任理事国という特別の地位が設けられておりますし、軍事力における国家間格差は拡大する一方です。冷戦期にあっては米ソ両大国が抜きんでた軍事力を保持する一方で、冷戦後にあっては、中国が急速に頭角を現してきました。そして、常任理事国の地位を軍事的にも不動のものとしたのがNPTであったかのもしれません。何故ならば、常任理事国は世界の平和を護る’世界の警察官’であるとする認識から、核兵器という’魔物’の保有を独占的に認めたからです。(つづく)
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