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2022-05-10 00:00
(連載2)日本はロシア産原油やLNGの取引を止めるべきなのか
岡本 裕明
海外事業経営者
東京ガスはそれでもサハリン2への依存度は全体の1割とされ、九州電力や東北電力もその程度の依存度です。しかし、東邦ガスは2割、広島ガスにおいては5割もの依存となっており、「日本のエネルギー会社はバタバタと倒れる」のはまんざら大げさでもないのかもしれません。また、別の方法で代替できるかといえばそう簡単ではありません。そして、原油やガス取引の場合、長期契約が肝で、いわゆる単発買いであるスポット取引だと現在100万BTU当たり50㌦で、それは原油価格に直せばバレル350㌦と同じ(東ガス内田高史社長)ということになります。つまり、サハリンの撤退は日本経済には大きな影響が出ることは確実です。
一方、欧州はロシア産石油からの依存脱却を決め、年内にも「さようなら」をするという声明が出ていますが、これを強行するにはアメリカやサウジをはじめ、世界中の協力の枠組みがないと体制を整えられないでしょう。つまり、今の原油、ガス価格の高騰は始まったばかり、ということにすらなりかねないのです。日本政府も必死でガソリン価格抑制に努力していますが、そんなレベルでは収まらなくなる公算すらあり得るのです。原油ガス世界争奪戦が起きる可能性でしょうか。
ならば日本政府や出資企業、関連企業が口そろえて言うようにサハリンからの撤退は賢明ではないという発想は正しいと言えます。もちろん心情的に「冗談じゃない、ロシアのモノなど買えるか」という気持ちもわかります。しかし、日本は欧米と違うという点を理解する必要があります。まず、欧米主導という言葉の中に日本が入るのか、であります。私見では、現在の日本は国際政治において戦前ニッポンのような強い立場にはなく、西側諸国と共に歩めるアジア地区の経済リーダーの一角にすぎません。逆に、アメリカは資源、食糧、人口、経済規模を完備しています。欧州も国の数が集まっているのでどうにか助け合いが可能です。この点で、日本は脆弱で孤独だということを認識すべきです。地政学的にも欧米とは距離があります。それを踏まえて、ロシアをどう見るかとロシアをどう扱うかについて、ここは分けて考える必要があります。つまり、安直に欧米との協調路線をとれとは言えないと思うのです。もう一つは日本と中国の関係を考えた時、日本の撤退=中国の進出という等式となる点です。つまり、シーソーの関係です。日本が守るべきは何か、と言えば日本の権益の維持や成長拡大とロシア、中国、北朝鮮にみられる権威主義の排除と民主化の推進であるならばサハリンをコントロールするぐらいに攻める必要があると考えています。撤退が企業ガバナンスにとって必ずしも正しいわけではないというコンセンサスを作る必要もあると考えています。
この問題は簡単な議論ではないでしょう。ロシア産などなくてもエネルギーの確保はできる、ロシア産を禁輸できるように代替先を探す努力をしてないじゃないか、という声もあるでしょう。しかし、批判をするのは簡単ですが、実務ベースではこれほど困難な作業も少ないと思っています。ただでさえ不和で経済の先行きが見通せない中、進んで不安要素を作る必要はない、というのが私の考えです。(おわり)
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