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2022-04-27 00:00
(連載1)対ロシアと対中国に見えるダブルスタンダード
倉西 雅子
政治学者
今般のウクライナ危機は、ロシアによる国際法上の違法行為を以って対ロ制裁の合法性の根拠とされております。日本国政府の政策も同見解に基づいており、再三にわたって、ロシアの違法性を強調しております。その一方で、過去を振り返りますと、日本国政府並びに米欧諸国の政府にあって、国際法違反行為に対するダブルスタンダードが見受けられるのです。
それでは、どのようなダブルスタンダードであるのかと申しますと、それは、中国に対する態度との違いです。何故ならば、中国は、南シナ海問題にあって2017年7月に下された常設仲裁裁判所の判決に従わず、今日なおも同海域に居座り、強引に軍事要塞化を進めているからです。
ウクライナ危機のケースでは、国際司法裁判機関が、証拠に基づく事実認定を経てロシアの違法性を判断したわけではなく、また、裁判に先立って中立・公平な検察機関による厳正なる調査も行われていません。いわば、各国が、国際レベルでの司法手続きなしでロシアを‘有罪’と決めつけている状況にあります。一方、南シナ海問題にあっては、常設仲裁裁判所は法において定められた手続きを漏れなく踏んでいました。同裁判所の規定では、当事国の一方による単独提訴が認められておりますので、中国の欠席は判決の効力には影響しません。否、同裁判所は、独自に南シナ海に関する歴史的経緯を調べるとともに、中国側が主張する「九段線」の根拠についても厳正に審査しています。言い換えますと、同裁判所は、双方の主張に対して中立・公平な立場から中国には国際法上の権利がないとする判決を示しているのです。
国際法秩序の重要性を考慮すれば、この判決が下されたと同時、各国とも、対中制裁の実施に踏み切ったはずです。ところが、この時、常設仲裁裁判所という国際司法機関による判決文を中国が紙屑のように破り捨てたにも拘わらず、日本国政府をはじめ、各国政府とも中国に対して具体的な制裁に動くことはありませんでした。(つづく)
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