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2022-04-22 00:00
第20回党大会・3選を目指す習近平総書記の憂鬱
坂本 正弘
日本国際フォーラム上席研究員
1.三選への目覚ましい成果
2022年3月の人民代表者会議・政治報告は、2021年を党と国家の歴史上、極めて意義ある年だとしたが、以下の成果は習総書記3選への道ともいえた。第一に、中国共産党成立100周年の7月、「小康社会の実現」という国家目標達成の宣言をした。更に、11月6中全会で毛沢東、鄧小平に次ぐ、「第3の歴史決議」を行い、中国人民共和国創立の2049年向けての、次の奮闘目標として、習近平を核心とし、格差是正の「共同富裕」の追求を掲げた。第2に、ゼロ・コロナ政策も、空前の監視体制で抑止に成功し、21年GDPの成長率は8%を超える状態となった。14次5か年計画を発足させ、AIなど先端技術を革新し、広大な中国市場を梃子に、世界市場を支配するとの内外双循環を提唱した。第3に人民解放軍創立100周年の2027年には軍近代化を完了し、台湾解放に触れたが、ミサイルは卓越し、海軍艦艇の数では米国を抜いている。第4に、米国・民主主義は衰退にあり、中露枢軸の権威主義が勝るとし、中国の優位の道を誇った。
2.習氏への権力集中
かかる実績の上に、習政権への権力集中が目立っている。まず、上記、「歴史決議」は、習近平は「党の核心」だとする上に、「習近平・新時代の中国の特色ある社会主義思想」は党を主導する思想だと、名前入りで崇める個人崇拝ぶりである。第2に、党に多くの指導小組を作ったが、習近平自身は組長となり、小組は国務院の業務に強く介入している。第3に、地方政府にも、その領導性を強めている。第4に、人民解放軍も、中央軍事委員会を改組し、5大戦区に再編し、戦える軍隊を目指すが、ここでも、習氏の司令の貫徹を狙う。
3.コロナ猖獗と共同富裕の政策不況
習総書記・3選の道には、本年に入り、幾つかの困難に直面しいる。第一は、ゼロ・コロナ政策である。中国は、コロナ制圧の成功を共産党独裁体制の優位だと誇り、本年3月の吉林省や西安などでの新規感染にロックダウンで対応した。しかし、4月に入り、新規感染は、全国・数十の都市に拡大したが、特に、上海で2万を超えた。当局は、上海市2千6百万人全員の検査、ロックダウン、移動の制限などで対応しているが、長引くロックダウンに住民の不満が蓄積し、部分的に爆発している。中国製ワクチンの有効性に疑念がある中、中国のゼロ・コロナ政策は、結果として、中国人の多くをコロナ免疫外に置いている。上海市の一部幹部が更迭され、次期首相候補の李強書記の手腕も問われる。無謬の共産党体制で、ゼロ政策の修正は難しいが、今後の状況次第では、習政権自体への打撃となる情況である。第2は、「共同富裕」のもたらす政策不況である。2021年8月の共産党中央財政委員会は、不動産開発、学習支援、ITの3産業を格差是正の重点とした。IT産業では、アリババやテンセントなど独占禁止法違反で罰金が科せられ、更に高額の寄付が強制された。学費負担が家計を圧迫するとして、多くの学習塾が閉鎖された。更に、融資条件を厳しくされた不動産開発企業は、恒大集団が典型だが、数百社が破産に追い込まれた。しかし、不動産開発業は、中国経済で大きな地位を占める。特に、固有財源に乏しい地方政府には不動産開発収入の減少は致命的である。IMFは本年1月、中国経済年次報告で「不動産部門の失速は金融や財政への悪影響のリスクがある」とし、更に「消費の拡大には有効なワクチン接種とゼロコロナ政策の緩和が必要」と勧告した。中国経済は政策不況だと診断で、中国政府は昨年末から景気テコ入れに政策を転換し、「共同富裕」への言及は影をひそめる。看板政策の転換は打撃で、習総書記3選反対の報道も出るが、後継者不在に助けられる状況である。
4.ウクライナ侵攻と中露関係
第3は、対外関係である。習政権は、米中対立への対応に苦慮してきたが、米国の分裂、コロナ対応の不手際の中で、米国は衰退過程にあるとし、30数回の中露首脳会談を行い、権威主義体制が優位だと、中露枢軸関係を強めてきた。特に、北京冬季オリンピック時の、中露首脳共同声明は、両国の戦略的パトナーシップは無制限の友好だと誇った。しかし、中国は、ウクライナの侵攻後のロシヤとの関係には戸惑っている。ロシヤへの経済制裁には反対し、交易を拡大はしているが、3選を控え、中露関係のかじ取りに、苦慮も感じられる。
5.自由・民主主義対専制・権威主義
バイデン大統領は本年の一般教書で「自由は常に専制に勝つ」としたが、Jude Blanchetteは、「混迷の習近平外交」の論文で、習近平はプーチンと同じでないが、独裁権力者として冷静な判断を失う可能性は同じとする。長期に権力を握り、少数のイエスマンに囲まれ、孤独で、中国というより、習近平の外交となり、下の者は習近平の命令を待つのみとなる。豪、日、印を敵にし、香港を圧迫し、台湾の反抗を助け、米国に敵意を持ち、独裁者の誤った道を歩む。但し、中国には、危機を避ける知恵があるはずだが今回はどうかと結んでいる。
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