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2007-08-15 00:00
連載投稿(2)南北の利益の一致が生んだ首脳会談合意
武貞秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
また、韓国にとってのもうひとつのメリットは内政に関連する。南北首脳会談を成功させれば、金大中政権以後の太陽政策の仕上げの意味になる。それは、北朝鮮への融和政策を厳しく批判してきた野党ハンナラ党に対して、「現政権の政策は失敗していない」と示すことになるだろう。その雰囲気は、12月19日の韓国大統領選挙に大きな影を落とすだろう。ただ、韓国にとって、首脳会談は両刃の剣である。首脳会談が成果なく終わったり、対立したまま終ったりするとき、首脳会談開催が拙速だったといわれる。韓国が北朝鮮に譲歩しすぎた場合、韓国世論は反発し、4か月後の大統領選挙では、韓国の現政権に不利な結果になる危険をはらんでいる。
そうなると、北朝鮮の姿勢が重要になるが、韓国大統領選挙を意識する北朝鮮も首脳会談を失敗させたくないので、一回目の首脳会談以上の成果を出すことに努力し、米朝協議や6か国協議で到達できなかった成果を出すことに努力するだろう。いま、北朝鮮は南北関係が順調に改善されつつあることを示したい時期だ。核問題では高濃縮ウラン型核計画の有無をめぐって、困難な協議が予想される。それを知る北朝鮮は、韓国への「柔軟な政策」を示しておいて、6か国協議で譲歩するのは米国であると示したいだろう。北朝鮮が南北対話の進展を、「米国が核問題、金融制裁で北朝鮮に厳しい姿勢をとっていると、南北関係改善の流れに置いてゆかれる」というメッセージに利用することは珍しくない。
このように、南北の利益が一致したので、首脳会談合意に至ったのである。そこにあるのは、米韓同盟のもとで自主国防を追求してきた韓国の米国に対する「思い」と、「韓国の自主性はどこにあるのか」と問い続けてきた韓国ノムヒョン政権の政策と、それを観察し、韓国の自尊心の高まりを対南政策に活用する北朝鮮という構図である。そこには朝鮮半島の旧来の構図が見える。来年、南北は建国60年を迎える。さて、南北首脳会談で、新しい構図が見えてくのかどうか。2000年6月の第一回首脳会談とは比較にならないほどの重要な出来事になるだろう。(おわり)
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