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2022-03-29 00:00
ウクライナに降伏を勧める人へ
赤峰 和彦
自営業
外部からの侵攻を受けた場合、海に四方を囲まれた日本人には、容易に国外退避する方策はなく、有事には降伏して奴隷の道を選ぶのか、無為無策で玉砕に至るのか、防衛力を高めて国を守るのか、この三つの選択しかありません。この中で、奴隷の道を選んだ場合はどうなるのでしょうか。戦争犯罪ではナチス・ドイツのホロコーストがよく取り上げられるのですが、実は20世紀におけるジェノサイド(大量虐殺)は、ソ連のスターリンによる1000万人にもおよぶ粛清や中国の毛沢東に至っては数次にわたっての数えきれない人命が奪われてきた歴史があります。
毛沢東のジェノサイドは中国という国に嫌悪を覚えるほどひどいものです。朝鮮戦争では人海戦術によって50万人の同胞である中国兵を死に至らしめました。人海戦術の犠牲となった兵士たちは毛沢東と戦ってきた旧中華民国の兵士たちで、共産党軍の毛沢東にとっては邪魔ものです。武器らしい武器も与えられず最前線に送り出された上、彼らの後ろに督戦隊がいて退却すら許されない、死ぬことしかしか許されませんでした。次に毛沢東が行ったが、チベット侵略と虐殺です。人口600万人といわれていたチベットは、中国の侵略で120万人、 人口の20%が犠牲になりました。以降、チベットは中国の自治区になっています。現在、これ以上のことが新彊ウイグル自治区で行われており、人権団体は「ものすごい人数が収容所で洗脳、拷問などの人格を破壊するような扱いを受け、何百万人もが強大な監視機関におびえながら暮らしており、人間の良心が問われている」と国連に報告しています。しかし、国連はいつものように無力です。
1945年8月9日、ソ連軍は対日参戦し満州国に攻め入りました。敗戦の翌日の8月16日以降も日本兵を武装解除しながら、南樺太や千島列島に侵攻しました。このとき捕らわれの身となった日本兵、満州開拓団の農民,満州の官吏,南満州鉄道株式会社など国策会社の職員,従軍看護婦など7万5000人がシベリアの収容所に抑留され、鉄道建設,炭坑・鉱山労働,土木建築,農作業などさまざまな労働に強制的に従事させられました。粗末な食事と厳しい労働環境の中で5万5000人が死亡したと言われ、生還した人たちの多くは洗脳されており、日本共産党員となった人も多かったようです。ただ、抑留生活については、あまりにも過酷だったのか、帰還者の多くは何も語りませんでした。同じような過酷な運命にあったのが27万人のぼる満蒙開拓団の人たちです。ソ連軍の侵攻で逃避行を余儀なくされた人々は、満州の広野でコーリャン畑に身を潜めながら歩き、寒さと栄養失調、疫病で8万人も命が奪われたと言います。死者に対してロシア人は弔うこともせず、金歯や腕時計を簒奪していったと言われています。日本中を涙に包んだ「中国残留孤児」もこのときの出来事でした。あまりに壮絶な体験なのでご本人たちが何も語ろうとはしません。NHKなどがたまにこの問題を取り上げますが、日本批判に繋げる報じ方しかしません。実は、私の母も満州引き上げ者です。満州の高級官僚の後妻として戦時中に満州に行き、敗戦と同時に命からがら大分県に帰ったとのことです。そのとき、先妻の娘2人を連れて帰りましたので、私と血つながっていない姉たちは「おかあさんは命の恩人」と言っていたのを覚えています。ただ、私も満州からの帰還の話はいろいろ慮って詳しく聞いたことはありません。
日本が侵略されて多くの日本人が占領下で生きざるを得なくなったらどうなるのでしょうか。仮に人権意識の高い欧米諸国で捕らわれても人間扱いしてくれるかどうか、本当のところわかりません。京都大学名誉教授の会田雄次先生の名著『アーロン収容所』には、欧米人にとって黄色人種は動物扱いだったことが実体験を通して書かれています。人権と民主主義の盟主であるアメリカでさえ、イラクやアフガニスタンと戦争になった際には、現地の捕虜や非戦闘員に苛酷な経験を強いる例が数多く見られました。まして、日本周辺の中国、ロシア、朝鮮半島の国々に生殺与奪の自由を握られた場合、どのようなことが起きるかは想像もできません。現在、ウクライナではロシアに占領された南東部のマリウポリの住民、6千人が連れ去らさられました。住民らはいったんロシア国内の「選別キャンプ」に送られた後、最終的に極東のサハリンなど「経済的に貧しい地域に送られる」可能性があります。したがって、現在のウクライナの悲劇を見ながら「戦うな」と言い放つ人がどれだけ罪深いことを言っているのか、そして日本が侵略された場合、「戦わず降伏せよ」ということがどれだけ犯罪的なのか、恥を知るべきだと思います。歴史を知らない観念論は戯言に過ぎません。ウクライナ人が挙国一致でロシアと戦っている今を、第二次世界大戦を敗戦で終えた日本人として深く洞察する必要があるでしょう。
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