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2022-03-02 00:00
(連載1)ウクライナ危機が問う積み残された問題
倉西 雅子
政治学者
ロシアが周辺諸国に仕掛ける一連の強引な侵略は、今日、国際社会の平和を乱す重大な脅威として認識されています。国連憲章をはじめ、国際社会は、先ずもって国際紛争の平和的解決を求めていますし、1974年に国連総会で採択された「侵略の定義に関する決議」でも、他国の領域への侵入や攻撃は侵略とされていますので(第1条・第3条)、今般のロシアの軍事行動は、国際法違反であることは明白です。このため、西側各国とも、ロシアによる国際法違反行為を厳しく咎めると共に、経済制裁といった対抗措置に着手することとなりました。かくして、ロシアは、’厳しい冬’への逆戻りが予測されているのですが、対ロシア政策を考えるに当たって、一つ、重大な問題が積み残されているように思えます。
この積み残された問題とは、多民族混住地域における民族自決権の問題です。敢えてこの問題を指摘したのは、ロシアが拡張主義を遂行するに際して採用している基本戦略が、周辺諸国の領域内に居住しているロシア系住民の’政治的利用’にあるからです。今日の国際社会において成立している国民国家体系は、グローバリズムによって揺らぎを見せつつも、民族自決、あるいは、一民族一国家を基本原則としています。所謂’新大陸’や植民地化の過程で人工的に線引きされたアフリカ大陸などにあっては同原則を純粋に適用することはできないまでも、一般的には、’民族’は、主権的な権力を及ぶ範囲、並びに、定住地としての領域との結びつきを含めて国家の基本的な枠組みに正当性を与えているのです。
ところが、多民族が混住するユーラシア大陸の中央部は、’新大陸’や’植民地’と同様に一民族一国家の原則が成立し難い状況にあります。とりわけ、ロシアの周辺諸国では、ロシア帝国、並びに、ソ連邦時代に時の政権が非ロシア系住民に対して強制移住を強いる一方で、’支配民族’としてロシア系住民も多数移入してきています。もとより遊牧民等が多く、国境線の線引きが困難を極めるユーラシア大陸にあって、過去の’帝国’の移住政策は、多民族混住状態に拍車をかけると共に、今日まで続く民族問題の火種を残したと言えましょう。
因みに、クリミア半島に居住していたクリミア・タタール人は、1783年のロシア帝国への併合を機として、ロシア人やウクライナ人等の移民の大量移入により少数派に転落するのみならず、1944年には、スターリンによって同半島から追放されています(追放は1967年に解除され、帰還運動が起きている…)。(つづく)
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