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2022-02-28 00:00
「ブタペスト覚書」署名国として米国は何をすべきか
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
歴史学者の八幡和郎氏は、2月25日付け「アゴラ言論」で「日本のネット言論を見ていると、ウクライナが1994年のブタペスト合意で核を放棄したのは間違いだったというトンデモ議論が盛んだ。しかし、そんな議論は欧米では見られないし、何よりも北朝鮮の核保有を後押しする売国的言説だと思う。」と主張しておられる。その理由として、八幡氏は、「ウクライナはソ連崩壊で独立した当時、1800余基の核弾頭とICBMを保有していたが、これを維持管理する十分な経済力がなく、経済援助を求めていた。ヨーロッパ各国はウクライナの核保有には絶対反対だった。ウクライナの核放棄が誤りだったと言うことは、北朝鮮を応援することになる」との趣旨を述べておられる。
確かに、ソ連が崩壊し独立した当時のウクライナを取り巻く厳しい国際環境や、ヨーロッパ諸国の核保有反対の動き、当時のウクライナ自身の経済力等を考えると、八幡氏の主張にも説得力がある。しかし、ウクライナが核兵器を放棄したのは、とりわけ、核不拡散や核独占を狙う米国・ロシアによる強い圧力、すなわち「強要」があったからこそであり、自発的に放棄したのではない。その証拠に、米国・ロシアをはじめ、英・独・仏・中国は、ウクライナに核を放棄させるため、核放棄後のウクライナの安全・独立・主権を保障しているのである(「ブタペスト覚書」)。
今回、ロシアがウクライナ領東部の親ロシア派武装勢力が実効支配する二つの「共和国」の独立を承認したうえに、ウクライナ全土に侵攻したことは、明らかに「ブタペスト覚書」違反である。ロシアと共同して、ウクライナの安全・独立・主権を保障し、ウクライナに対して「核放棄」を強要した米国は、「ブタペスト覚書」の署名国として、単なる「経済制裁」にとどまらず、ロシアのこれ以上の侵略を抑止する行動を直ちに起こすべきである。
具体的には、米国・バイデン大統領は、直ちにウクライナ・ゼレンスキー大統領と、ウクライナの「永世中立化」に向けた協議に入り、その結果に基づきロシア・プーチン大統領と「ウクライナ永世中立化」の首脳会談を行うべきだ。安全保障上、ウクライナのNATO加盟に強く反対するロシアにとっては、ウクライナの「永世中立化」は国境を接するロシアにとって安全保障上も反対する理由はないからである。
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