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2022-02-25 00:00
ウクライナ情勢の次善策はなにか
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
ウクライナ情勢は妥協や交渉もできないままに、ついに具体的な戦闘状態に入った。日本のメディアを含めて西側諸国のメディアはプーティンを不倶戴天の敵のように報じている。国際政治は、映画やドラマの白黒をつけて、良い方と悪い方が出てきて、悪を叩きのめせば済む、善悪物語ではない。戦争をしないためにも必死になって落としどころを見つけて、火の手が上がらないようにするのが大人の態度である。アメリカ国内でもそうだが、いつもは平和主義者のふりをして、人権や自由を声高に叫ぶ理想主義者ほど、今回のような事態になったら突然好戦的になって、「アメリカは軍隊を送って、ロシア軍を叩きのめせ」などと言い出す。そうならないように事前の段階で、清濁併せ吞む形で交渉して、棚上げ、現状維持などをしておけば良いのに、それをしないで、火の手が上がってからガソリンをかけるようなことを言い出す。
アメリカがウクライナに軍隊を送って、ロシア軍と直接矛を交えることになったらそれはもう冷戦ではない。世界大戦につながる動きであり、核戦争にまで発展しかねない。そのようなことが分かって、勇ましいことを言うのかどうか分からないが、「そんなことになるなんて思いもしなかった」と焼け野が原で呆然としながら、後悔しても遅いのである。そのために、抑制的に、鈍重に動くことが重要である。しかし、もう事態が悪化する前にできたであろうことはもはや達成不可能だ。
ウクライナに関して言えば、西側諸国とウクライナは2つの地域の分離独立は認めない、ロシア側はウクライナのEU加盟とNATO加盟は認めない、ということであったのだから、それぞれに妥協して、2つの地域にある程度の自治権は認めてもウクライナからの分離独立は認めない、ウクライナのEU加盟に関しては正式メンバーではなく、特別メンバーという形で、経済関係は強化するが、NATO加盟は認めない(申請しない)、ということで現状を維持するということができたと私は考える。しかし、今ではもう手遅れだ。
結局ウクライナからの2つの地域の分離独立は認めるがロシアによる併合は認めないという形でしか妥協の道はないように思われる。それだったら、事態がここまで行かないうちに交渉して妥協の道を探るべきだった。ここまで来てしまえば、世界大戦クラスの事態にならないように抑制することが次善の策ということになる。アメリカは自分の理想主義のために世界を壊して回っている、何とも迷惑な存在になり果ててしまった。
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