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2022-01-26 00:00
(連載1)「必要最小限度」のおかしさ
荒木 和博
拓殖大学海外事情研究所教授
今回お話するのは「必要最小限度」の防衛力という言葉についてです。昨年12 月 10 日にグランドヒルズ市ヶ谷で行われた予備役ブルーリボンの会のシンポジウムで、「必要最小限度」とは何なのかという話題が出ました。河野克俊前統合幕僚長、そして織田邦男元航空支援集団司令官がお話をされてましたけども、この「必要最小限度」の防衛力ってよくよく考えてみたらおかしな言葉ですよね。日本の防衛を全うしようとする時、自衛隊は国民を守るために「最大限」の努力をしなければなりません。そのためには、効率的に防衛力を整備をするのは当然のことだと思いますが、そうではなく、ともかく防衛力というものは、少なければ少ないほどいいということがまかり通ってきたのは、適当だったとは思いません。もちろん、別に際限なく増やせという意味ではなく、「必要最小限度」という言葉が持つ論点というのをもう一度しっかり考えるべきということです。
今、世界中で軍事力を強化する動きが続いており、特に日本の隣国、中国や韓国を見れば、軍事力を高めるべく非常に大きい軍事予算を組んでいます。また、いうまでもなく、北朝鮮は、その経済力に比してあまりにも過重な軍事組織を持ち先軍政治を推し進めています。東アジアで、我が国だけがそういう意味で言うと十分には予算をつけてこれなかったということなんだろうと思います。しかしながら、ロシアや中国、北朝鮮の動きを見ていると、戦後一貫して日本だけが異なる方向に突き進んできたことの評価はしないとなりませんし、やはり一歩立ち止まって、この考え方についての再検討というものはしないといけないでしょう。
まず、「必要最小限度」という言葉の字義を踏まえれば、つまり、今の防衛力で日本の防衛に必要な手当はできている、すでに間に合っているということになります。現状を鑑みてこれをその通りだと言い切れる人はいるのでしょうか。逆に、この何十年もの間、北朝鮮の工作船が日本の近海や海岸までやってきて、そして工作員が上陸しては脱出してということをもう数限りなく繰り返してきた事実だけでも否定できることです。これは、海上保安庁だけの責任ということはもちろん言えないでしょう。奄美大島沖で沈んだ工作船は 14.5mm の対空機関銃とか、RPG 7というロケットランチャーを持って対抗してきており、明らかに日本で相当する装備を持つのは自衛隊です。軍艦みたいな能力を持った船がこうやって日本の海を日本の法に則らずに好き勝手行ったり来たりして様々な工作活動を実施しているのを、日本政府はコントロールできてこなかったということです。
ゆえに、これを抑止するためには、やはり自衛隊自体に「必要最小限度」というのではなく、それなりの軍事力がなければいけませんでした。「必要最小限度」ではなく、日本国民を守るために「最大限」の努力をする、その中で効率的に整備していく、というのでなければ、「それなりの」防衛力を保つことができないからです。そういう意味で、私は例えばイージス・アショアの導入などは全く賛成できません。あの装備は、元来イージス艦の負担を引き受け人員不足にも効果的ということで当初導入されつつあったのですが、実際のところ効率的ではなく、膨大な投資を強いられることになり、一般の部隊がさらに切り詰めざるを得なくなるところだったのではないかと思います。(つづく)
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