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2022-01-26 00:00
(連載2)二正面作戦のロシア、伊達ではない
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
中国は、もともとコロナウイルスによるパンデミックが発生するよりも前から、南シナ海・東シナ海・台湾・中印国境などの国境地帯で領土紛争を起こしており、「真珠の首飾り」と呼ばれる海上交通路戦略を採ってインド洋での影響力拡大を進め、一帯一路によってアフリカと様々なところで軋轢を残している。これらの挑戦は超大国であるアメリカを刺激し習近平政権はトランプ大統領とかなり強い摩擦を起こしていた。最も注目すべきは、そのトランプの行った対中国経済制裁に対してアメリカの議会が上院下院ともに、トランプ大統領を擁していた共和党だけではなく民主党も大部分が賛成していたということである。その後バイデン政権になり、アメリカの多くの国家方針が変更されたが、対中国に関してはかなり強硬な姿勢が継承されているし、また、そのバイデン大統領の強硬姿勢をアメリカの多くのメディアは支持している。
さて、ロシアはどうなのか。ロシアは、2014年にクリミア半島の中において「ハイブリッド戦略」なるものを行った。これは軍隊ではなく、あくまでも民間人に化けた工作員が多数侵入し、ウクライナにおけるクリミア半島の人々を扇動し、そのうえでロシアへの編入を導くとともに、内乱を装って反対する人々を排除することだ。このハイブリッド戦争にヨーロッパは激しく動揺し、警戒を強めた欧米各国はロシアに対して経済制裁を行っている。しかし、プーチン大統領は、その就任のころから「旧ソ連邦版図の復活」を政治目標として掲げており、西側諸国による経済制裁が長期化しているにも関わらず、なおウクライナやベラルーシなどに関与する意志は揺らいでいない。
プーチンにとっては、国際社会の関心が中国などロシア以外に散乱している現状は好ましいものだ。コロナウイルスによる災禍、中国の覇権主義と北京オリンピック、アフガニスタンとタリバン政権、これらはそれぞれひとつひとつがロシアから目をそらすのに充分な大きい問題である。もちろん、国際社会にこれだけ大きな問題がいろいろと山積すると、ロシアとしては「少し控えればよい」程度の自重があれば充分目立たないで済むところである。しかし、プーチン大統領はなるべく世界の目が中国に向かうように「習近平をあおる」、つまり、習近平の冒険的な行動を逐次支持している。そういう意味で、北京オリンピックにおける外交的ボイコットはロシアとしては内心歓迎しているのではないか。プーチンは、世界の目が中国に向いている間にウクライナ問題を仕上げることが重要になってくる。つまり、「旧ソ連邦の版図の復活」だ。
しかし、ウクライナは欧州の喉元である。NATOが注目している。そこで、ウクライナで外交攻勢をかけつつ、旧ソ連のカザフスタンを片付けたということになろう。中国、ウクライナと二つの陽動をしながらカザフスタンで再度「ハイブリッド」を行うのは、なかなか考えた戦略である。そういう意味でタジキスタンなどもリスクが高まっている。今後、中国方面で何らかの事態があった場合、ロシアとしては中央アジアの権益を取引材料にして、欧米を交渉のテーブルに座らせ、中国との間には不可侵条約を結びながら中央アジアを占めるということは考えているだろう。伝統的なソ連のやり口であり、日本はその巧みな戦略に飲まれ旧満州で辛酸を嘗めたのである。さて、このように歴史は繰り返すとなるのか。なかなか興味深いところであろう。(おわり)
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