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2022-01-22 00:00
「世界不平等報告2022」が示す韓国社会の格差
真田 幸光
大学教員
フランス・パリには、日本語に翻訳するところの「世界不平等研究所」という機関があります。この研究所は、パリ大学・経済学部に併設された研究機関で、「世界の富と所得のデータベースに基づいて毎年、世界不平等報告を発刊している」という研究機関であります。また、ここでは、所得分配を研究する世界各国の学者100人以上が参加して、報告書を作成していると報告されています。そして、あのピケティ教授もこれに加わっています。
さて、その世界不平等研究所は、「世界不平等報告2022」を公表しました。報告書では、欧米、中国本土、そしてロシア、インド、中東、アフリカの不平等も分析されており、所得の不平等の度合いは、世界のほぼ全地域で高まっており、その傾向は続いているとしています。民営化や財政赤字によって各国で公共財産の割合が減り、政府が不平等を抑える力が低下し、個人の富の不平等も、拡大に拍車がかかっており、止まらない模様であります。2018年には、こうした傾向を止める為には、(1) 累進課税、(2) 金融資産の所有者の把握、(3) 教育と仕事の機会の平等化、(4) 政府の未来への投資、といった提言がなされましたが、改善されていないようです。そうした中、今回は韓国の不平等の実態についても言及しています。即ち、所得、富、性別、二酸化炭素排出の四つの側面から不平等水準を分析、その結果、韓国の成人人口の平均所得は購買力平価(PPP)のレート基準で3万3,000ユーロとなり、西欧諸国と同等の水準になったと報告されています。(ここでの所得とは、年金と失業保険を反映した税引き前の金額)
しかし、2021年基準で、上位10%層が1人当たり15万3,200ユーロの収入を得、韓国全体所得の46.5%を占める一方で、下位50%層の所得は1人当たり1万600ユーロと全体の16.0%に留まったとして、その格差が指摘されています。報告書は、韓国経済が1960~1970年代に社会的セーフティーネットを構築しないまま規制を緩和し、高速成長を遂げたのに伴い不平等の問題が深刻化したと分析、1990年代以降、韓国の全体所得のうち上位10%層のシェアは10ポイント増え、下位50%層のシェアは5ポイント減って不平等が更に拡大したとしています。
韓国の成人が保有する富は平均17万9,700ユーロで、中国本土の平均の2倍以上、インドの平均の8倍以上となり、アジアで最も裕福な国の一つと評価されてはいます。一方、富の不平等は所得の不平等より深刻であると言うことです。そして、所得を基準にすると上位10%層と下位50%層の格差は14倍だが、富を基準にすると上位10%層と下位50%層の格差は52倍になるとも報告しています。勤労所得も男女で平等ではないとの評価も出ています。韓国の全体の勤労所得のうち女性のシェアは1990年の27.3%から2000年に29.2%、2010年に30.9%、2020年は32.4%と増え続けているものの、理想的な平等値である50%には及んでもいないようです。今後も、こうした不平等に関する指摘は世界的に広がりそうであり、日本としても、「富の構成分配とそれを支える成長戦略」のセットは重要になってきそうであります。
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