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2022-01-18 00:00
(連載1)アメリカが向き合う「10大リスク」
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
世界の10大ニュースというのはこの時期の話のネタとして注目されるものだ。他方で、
ユーラシア・グループが毎年発表する「10大リスク」
というのも国際情勢に興味のある向きでは、同じくらい話題になるものだろう。なかなか日本では目にしない内容である。何よりも「ニュース」は過去にあった出来事をそのまま検討し、自分たちにとって印象に残ったものを選ぶという「確定事実」に関する作業であるが、しかし「リスク」は未来に起こりうる可能性を検討する作業ということで、作業する方からすればいろいろな意味でチャレンジングである。
だいたい「危険」という単語の英文訳は主に「リスク」と「クライシス」の二つの訳文がある。「そこにある危機」というのは「クライシス」であり、その場合は、その場で逃げなければ死に至るとか致命的な損害を受けてしまうということが挙げられる。それに対して「リスク」というのは「漠然とした危険」とか「不安」というように訳すべきであり、切迫した危機に対しては使わない。
つまり「10大リスク」とは「10個の漠然とした不安」と受け取って良いテーマであり、つまりは「このまま行けば脅威になる」ものではあるものの、すぐに戦争になるなどの「差し迫った危機」とは受け止められていない問題ということになる。もっと端的に言えば、「冷戦中の敵対国」とか「潜在的敵対関係」ではあるものの「すぐにミサイルが飛んでくるような関係」ではないということである。
昔、ブッシュ大統領はこの対象として北朝鮮とイランとイラクを「悪の枢軸」と名付けて列挙した。しかし、残念ながらそのあとのオバマ政権はこれらのリスクに真正面から向き合うことなく終わった。このオバマ時代の8年間は、貴重な時間を浪費したとみなされても仕方がないものとなった。イランの核問題や北朝鮮のミサイル問題はおざなりな手当てにとどまり今もアメリカの頭痛の種で有り続けているし、G2などと言って中国を持ち上げた弱気なアメリカを見て習近平は一気に覇権主義に突き進んだ。また、ロシアはウクライナやベラルーシに圧力をかけ東欧情勢は厳しいものになった。トランプ前大統領はオバマのやり方を継承しなかったが、バイデン大統領によって揺り戻しが起こった。そのバイデン大統領のアメリカにおける「10大リスク」に注目したい。仮想敵国がいる国において「リスク」というのは仮想敵国の存在そのものであり、また、仮想敵国の発展的な行動はすべてリスクになる。つまり、仮想敵国の発展は、その増強された国力が自国への侵害に使われるということを意味しているからに他ならない。(つづく)
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