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2022-01-07 00:00
日本国も‘双子の赤字’国になるのか
倉西 雅子
政治学者
アメリカは、財政赤字と貿易赤字の二つの赤字を抱える‘双子の赤字’国として知られてきました。歴代政権は、何としてもこの状態を解消しようとして、歳出削減や貿易不均衡の是正に取り組んできたのですが、これまでのところ、両者とも解消に成功したとは言い難い状況にあります。そして、今日、高度成長期以来、貿易黒字国としての地位を築いてきた日本国もまた、‘双子の赤字’国に転落する危機に直面しております。
貿易統計によりますと、日本国の貿易収支は、年々赤字傾向が強まっているそうです。特に今年はコロナ禍ということもあり、ワクチンの輸入に起因する赤字も積み増しており、赤字幅が広がっています。日本企業は、製造業をはじめ製薬分野などにおいても輸出の減少が見られ、頼みの自動車産業もEV化によってシェアを失えば、輸出産業が総崩れとなる恐れもあります。規模の経済、並びに、デジタル化が優勝劣敗を決するグローバル化は、日本企業の輸出競争力を大幅に削ぐ形で進行してきたと言えましょう。このため、巨額の外貨準備を積み上げてきたとはいえ、貿易赤字の長期化は、徐々に日本国の‘体力’を蝕むことが予測されます。未だに世界有数の債権国でもありますので、即、デフォルト危機というわけではないのでしょうが、日本国政府の‘未来志向’の政策方針からしますと、脱炭素に伴う太陽光パネルや風力発電施設の大量輸入、デジタル化に伴う米中両国のIT大手への使用料や特許料等の支払い、先述したワクチンを含む先端医薬品の輸入などなど、何れも国際収支のさらなる悪化が予測されるものばかりです。
一方、‘双子の赤い字’が常態化してきたものの、アメリカは、何と申しましても米ドルが国際基軸通貨の地位にありますので、貿易決済に窮してデフォルト危機に陥る可能性はまずあり得ません(現状では、人民元が米ドルにとって代わる可能性はそれほど高くはない…)。加えて、トランプ政権以来、アメリカ政府は、財政赤字を減らすべく米軍の駐留費の削減などにも取り組みつつ、貿易赤字の解消策として‘バイ・アメリカン政策’や対中貿易の見直しをも遂行しています。また、デジタル化を促進し、世界規模でプラットフォームを構築し得るグローバル企業としてのIT大手を育てることで、‘稼ぎ頭’をも得ています。
アメリカでさえ、‘双子の赤字’解消に手を尽くしているのですから、日本国も、為すに任せる、というわけにはいかないはずです。もっとも、日本国が、アメリカよりも遥かに苦しい立場にあることは言うまでもありません。日本円は、米ドルほどの実力はありませんので、将来的には通貨危機に見舞われないとも限りませんし、米中のグローバルIT企業に匹敵する企業は見当たりません。政府もメディアも、グローバル化とデジタル化を、スピード感を以ってより強力に推進すれば、日本国は再び成長軌道に乗れると主張しています。しかしながら、先述したように、両者を実現しようとすればするほどに、貿易赤字が拡大してしまう可能性の方が高いのではないでしょうか。このように考えますと、日本国は、グローバリズムとデジタル化の波に飲み込まれる前にここで一旦立ち止まり、戦略を練り直す必要があるように思えます。貿易赤字を永久に続けることはできないのですから。
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