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2022-01-07 00:00
(連載2)ショルツ新首相のドイツはどう変わるか
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
そのため、極端なことを言えば、EUのさじ加減ひとつで特定の許認可における不利な決定を得た構成国は自国の産業が甚大な損害を受けるともいえ、その点でEUで強大な影響力を持つドイツの頭が変わるとどのような振る舞いの変化があるのかというのは、他の国にとっても大きな関心事である。例えば、製薬会社の許可がある国で認可されなければ、同国内で薬剤師や薬学者を目指す人は、その許可のある国に移民しなければならなくなる。もちろん、「EUは一つ」というような考え方からならばよいかもしれないが、しかし、文化も歴史も共有していない国に移民をするか、未来をあきらめるかという選択を迫られれば、人は不満を感じる。仮に、日本で薬剤師になれず、なりたいのであれば中国に行かなければならなくなる可能性があったとしたら、中国の政治的指導者に対する日本の関心は想像するまでもない。EUでドイツによるそういう誘導があれば「人材がドイツ一国に集中する」ことがおきてしまい、他の国が「搾取」されることになる。通貨発行権がユーロ圏では一つであるから、その分を国債でまかなうこともできずに、債務の罠的にEUに取り込まれてしまう。そのことに危機感を抱いたイギリスはユーロを導入しなかったし、またEUから離脱したのである。
さて、そのEUが、今度は同様のやり方で中国に取り込まれようとしている。EUを一帯一路に組み込もうとしている中国に対して、ドイツのショルツ政権はどのような対応をするのか。メルケル氏は中国とロシアを天秤にかけてバランスを取ってきたが、末期には手詰まり感が出てきていた。また、イギリスがEUを離脱し、フランスも極右政党が台頭し、ドイツの思うようには動かなくなってきていた状況で、対露、対中だけでなく欧州内での立ち回りも難しくなってきてる。
ショルツ首相は、アジアを中国と他のアジア、つまりアメリカの影響下にある日本や韓国とで天秤にかけた外交を行うことを模索しているようだ。しかし、ドイツに日本に対する明るいシグナルが多く見られるとはいえ、「天秤にかける」というドイツの新しい姿勢が、日本に有利に働くとは限らない。もちろんドイツを無視したり敵対視する必要はないが、表面的な姿勢と実際の対日政策の行く末はをしっかりと見てゆかなければならないのではないか。
忘れてはならないのは、ショルツ氏がメルケル政権の副首相をしていたという実績であり、また、この新しいリーダーが左派政権であるということである。走り出しで中国やロシアと対抗しているとしても、もともとこれらの国とは親和性があるということになる。そして歴史的にドイツが左に大きく傾けば、世界にとってあまり良くない。緑の党など、地球環境を重視するワン・イシュー的な関心の偏った政党も政権には加わっていることもあり、今後どうなるのか何とも言いようがないが、ドイツが今後どのような外交を行い、アジアに関わるのかは大きな関心を持って見守っていく必要があるだろう。(おわり)
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