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2021-12-10 00:00
(連載1)半導体政策の最適解は日本企業支援
倉西 雅子
政治学者
今日、’グローバル市場’では半導体の供給量が不足しており、日本国政府も国内の企業活動へのマイナス影響を懸念しているようです(あるいは「5G」整備のため?)。この事態を受けて設立されるのが、日本国内に製造拠点を設ける内外の半導体メーカーに補助金を支給する6000億円規模の基金です。同基金からの支援第1号となったのが、熊本県に新工場建設を建設するTSMC(台湾積体電路製造)であり、凡そ4000億円を支出されるそうです。そして、第2弾の候補として、今般、名前が挙がったのが、米マイクロン・テクノロジー、並びに、キオクシアホールディングスなのです。
日本国政府としては、今後とも半導体需要の増加が見込まれることから、国内に供給源となる製造拠点を確保しておきたいということなのでしょう。しかしながら、この判断については、いささか疑問を感じます。何故ならば、半導体支援策とは、短期的な供給確保のみを基準として判断されるべきものではないように思えるからです。半導体の分野とは、それが産業の基盤であるだけに、複数の政策目的が重層的に重なっており、これらはしばしば二律背反の関係ともなります。そこで、複数の政策目的を比較考量しながら最適解を見出さなければならないのですが、以下に、外国企業への支援の是非に関して、関連する主たる政策領域において検討を加えてみることとしましょう。
最初に、半導体の安定供給の実現という産業政策上の政策目的に照らしてみますと、今日の日本国政府による海外メーカーへの支援は同目的には適っています。しかも、大手ともなりますと、価格においても安価な提供が期待されますので、半導体を必要とする国内の事業者にも恩恵が及びます。政府は、この側面を強調することで海外企業への公費による巨額支援のベネフィットを説明しているとも言えましょう。それは、競争政策の視点からはどうでしょうか。競争政策については、グローバル市場と国内市場との二つのレベルで考える必要がありましょう。グローバル市場の競争からしますと、巨大企業への日本国政府による支援は、半導体市場の寡占化を促進することとなります。もっとも、台TSMCは世界ランキングで3位、米マイクロン・テクノロジーは同5位ですので、1位の米インテルや2位の韓サムスンに対する競争力の強化により、グローバル市場での競争が活性化するとの主張もありましょうが、日本企業が’蚊帳の外’となることは確かなことです。
その一方で、国内市場における競争を見ますと、海外の大手半導体メーカーへの政府の支援は、ここでも自国企業の競争力を削ぐ結果となりかねません。日本企業最大手のキオクシアでさえ世界ランキングでは12位に過ぎませんので、公的支援によってTSMCやマイクロン・テクノロジー(エルビータ・メモリーは買収されて同社の子会社に…)の生産・供給能力が高まれば、同社の国内シェアはさらに低下するかもしれません。キオクシアも支援対象とされているものの、日本政府による海外企業支援策は、自国企業の弱体化を招きかねないのです。(つづく)
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