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2021-11-20 00:00
(連載2)「歴史決議」に見る中国共産党の後退
倉西 雅子
政治学者
そして第2に、「歴史決議」なる行為そのものが、人治の時代への回帰の象徴でもあります。同決議は、中国共産党の100年の歩みを総括しており、習主席は、自らを過去の指導者たちを評価し得る立場に置いています。近現代における’歴史’とは、客観的に検証し得る事実であって、’時の為政者が歴史を書く’とするのは過去の発想です。中国では王朝交代のたびに、現王朝が前王朝の歴史を編纂するという慣習がありましたように、’為政者は時をも支配する’という前近代的な思考から抜け出ていないのです。習主席にとりましては、江沢民氏や胡錦濤氏といった過去の指導者のみならず、毛沢東氏も鄧小平氏も、上から目線で自らが評価を与える対象に過ぎないのです。
第3に指摘し得るのは、「中華民族の偉大な復興」という目標です。このスローガンには、過去の中華帝国回帰への願望が臆面もなく表されています。しかも、近年、中国は、グローバリズムの旗振り役を買って出ています。国境をなき世界を目指すグローバリズムとは、自民族中心主義とは対極にありますので、ここにも、メビウスの輪が見え隠れするのです。
そして第4点として挙げられるのが、一党独裁という国家体制です。古今東西を問わず、国家権力とは、武力によって勝ち取る場合もありました。その一方で、ギリシャの民主政治のように、民主主義の制度化は、武力ではなく、国民による投票を経て政権の付託者が決定される体制をもたらしてきました。そして、民主主義の前提となるのは、国民に政治的な選択肢を保障する複数の政党の存在であり、多党制こそ民主主義の成立条件であったともいえましょう。しかしながら、暴力革命を経た一党独裁体制の成立とは、20世紀という近現代に起きた事件でありながら、その本質にあっては武力による政権の奪取であり、過去の歴史における忌まわしい建国や王朝交代とは変わりはありません。言い換えますと、革命、並びに、一党独裁体制とは、過去への逆戻りなのです。
「歴史決議」を経て、中国は、一体、どのような国家へと変貌してゆくのでしょうか。後世の歴史家は、そこに未来を志向しながら過去へと向かっていた’メビウスの輪’を見出すからもしれません。(おわり)
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