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2021-11-19 00:00
(連載1)「歴史決議」に見る中国共産党の後退
倉西 雅子
政治学者
2021年11月11日、中国では、中国共産党100周年を記念して「歴史決議(「党の百年の奮闘による重大な成果と歴史的経験に関する決議」)」が採択されることとなりました。同国の共産党が上海で設立されたのは、1921年7月23日とされていますので、2021年の今年は、結党から数えて100年目に当たります。もっとも、同決議は、結党100周年を祝うというよりは、習近平国家主席の独裁体制強化に向けた決意表明の色合いが濃く、自ら’核心’と位置付けた上で、「中華民族の偉大な復興」に向けての‘前進’を宣言しています。
今般の「歴史決議」では、1世紀に亘る歴史の歩みが強調され、今年を節目とした将来における方向性をも示されたのですが、習主席が、’新時代’という言葉を語っても、どうしたわけか、’新しい’というイメージが湧いてきません。むしろ、「中華民族の偉大な復興」とは、中華帝国が周辺諸国を睥睨していた過去への回帰というほうが自然です。‘未来に向かっているようで過去に向かい、過去に向かっているようで未来に向かう’という奇妙な時代感覚は、ディケンズが『二都物語』の冒頭で述べたフランス革命の時代、即ち、18世紀末の感覚と似通っています。
それでは、このパラドクシカルな時代感覚は、どこから来るのでしょうか。ディケンズが敏感に感じ取ったように、そして、明治維新が同時に王政復古でもあったように、’革命’や’革新’というものにあっては、未来と過去とのメビウスの輪の如き同時性は一つの特徴なのかもしれません。メビウスの輪と化した未来と過去との時間の輪は、騙し絵のように人々を惑わすのですが、今般の習主席による「歴史決議」も、客観的な視点から’メビウスの輪’を読み解きますと、未来志向の決議でありながら、向かう方向はやはり過去のように思えます。
「歴史決議」に見られる「21世紀のマルクス主義」なる表現はその最たるものであり、21世紀という時代にありながら、産業革命の時代を背景として誕生したマルクス主義に固執しています。21世紀に相応しい新しい思想を生み出そうとすることもなく、なおも、過去の思想に理想を求めているのです。同方向性にあっては、習主席を旗振り役として力強く前進すればするほど、過去へと全力で戻ってゆくことでしょう。(つづく)
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