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2007-08-07 00:00
連載投稿(2)新渡戸の普遍的価値発信力に学べ
木下俊彦
早稲田大学客員教授
新渡戸は、あるとき、ベルギーの神父の質問に対して、日本での道徳教育は欧米のようにキリスト教など宗教教育でなされているのではないと答えたが、論旨をもっと明晰にしておこう、とこの本を書いた。書くに当たって、彼は、一見孤立した文化に根付くと見える日本の武士道が、実は、静謐、フェアネス、忠誠、思いやり、自己鍛錬、無常を惜しむ心など西欧文化にも存在する(異質でない)価値観で統一されていることを彼流に証明し、武士道の背後にある日本文化が西欧とも異質でないサムシングであるというメッセージを言外にこめた。
彼は、武士道精神を尊んだが、それはそこにある国籍を超えうる普遍性に着目したからである。ナショナリスティックな気持ちを持つ人たちと一線を画した。彼はクウェーカー教徒で、日本国内で活躍しただけでなく、国際連盟の次長となり、国際平和運動にも身を尽くした(しかし、彼の死後、日本は、彼の期待を裏切った方向に進んでしまう)。彼の著書を時の米国大統領セオドア・ルーズベルトが読んで驚き、大量に本を購入し友人に配った話は有名だが、それは、新渡戸が本当に流麗な英語で、武士道について国際感覚あふれた論評をしたからである。
21世紀になり、日本でも英語教育は相当普及した。しかし、日本人は、欧米人、アジア人などが大事にする古今の名著をよみ尽し、彼らの価値観を理解したうえで、彼らに自分たちの普遍的メッセージを適切に伝えられるようになったのだろうか。ノー。内向き志向を強め、仲間うちだけで通用する隠語のようなメッセージを伝え合い、共鳴しあって、自己陶酔に陥っている人が多い。それでは、日本の存在感は減る一方だ。いずれ、経済大国の座を降りることになっても(それは不可避だ)、英国、フランス、イタリアのような生き方もある。日本人は新渡戸の原著でも読み返し、その精神に触れ直し、外国人が理解できる共通のことばで、国際的な共鳴を得られるメッセージをしっかりと発信するようにすべきである。(おわり)
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