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2021-11-02 00:00
(連載2)迷路に入ったコロナ発生源:「新型コロナウイルス発生源の評価摘要」
斎藤 直樹
山梨県立大学名誉教授
習近平にすれば、これをもって発生源を巡る問題の幕引きとしたいところであったと言える。それでもエンバレクを筆頭とするWHO調査団にウイルスの感染発生時期を始めとする、幾つもの重大な事実の片鱗をかぎつけられることになった。これを境として、WHOが中国側に感染拡大初期の患者の血液データや検体の提供に加えWHOによる独自調査を求めた。これに対し、生データの提供やさらなる現地調査を許可することがあれば、隠し続けてきた証拠を捉まれかねないと、習近平は危惧したのでなかろうか。そこで、WHOの要請には断固応じられないという姿勢を習近平はあらわにしたのである。新型コロナウイルスの発生源を巡る真相に近づこうとすれば、どうしても中国科学院武漢ウイルス研究所の実験室の事故の可能性は避けて通ることはできない。その意味で、同研究所に纏わる疑念は容易に払拭し難い。したがって、WHOの調査への習近平指導部による協力が不可欠になるとは言え、米国だけでなくWHOに対して敵意とも受け取れかねない反発を習近平指導部が示している以上、今後、発生源を巡る真相解明は一層難航するであろう。
何故、習近平はWHOへの協力を拒み続けるのか。2002年から2003年にかけて流行したSARSコロナウイルスの感染拡大からわずか17年後に未曽有と言うべき新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、現在も世界の多数国がその被害に苦しんでいる。2020年1月9日に習近平指導部が新型コロナウイルスのゲノム情報を開示したことにより、同ウイルスがSARSコロナウイルスと極めて類似していることが明らかになったことを踏まえると、武漢ウイルス研究所の実験室で行われていたとされるSARSコロナウイルスの研究が何らかの事由で新型コロナウイルスの発生を招いてしまったのではないかと推察することは決してありえないわけではないであろう。しかも新型コロナウイルスの発生源を巡る真相の解明がこのまま遅々として進まないようでは、いつ何時、また新たなウイルスの発生を招いてもおかしくないであろう。
しかもこの間、習近平は外部世界に向けて恫喝とも受け取れる強烈なメッセージを発している。2021年7月1日の中国共産党創建百周年記念式典で習近平は北京の天安門に集まった群衆を前に断固たる姿勢を示した。習近平曰く、「外国勢力が中国人をいじめ、抑圧し、奴隷扱いするなら、中国人民が血と肉で築いた鋼鉄の長城を前に、血を流すことになろう。」習近平演説にみられるのは必要とあらば武力の行使を何らいとわないとの強い決意表明である。これが14億の人口を抱える国家の最高指導者が発すべき発言であろうか、耳を疑いたくなる。中国内での新疆ウイグル自治区での大規模かつ深刻な人権抑圧、香港の自治の事実上の剥奪、さらに台湾への軍事侵攻に向けた威嚇を始めとする中国の膨張主義的かつ覇権主義的な動きに対し、各国による批判が一段と高まりを見せている。習近平による恫喝はそうした批判に対する痛烈な牽制と捉えることができよう。「外国勢力が中国人をいじめ、抑圧し、奴隷扱いするなら」と習近平は外部世界を激しく罵るが、実際に起きていることは中国内の人権の大規模かつ深刻な抑圧や弾圧であり、南シナ海や東シナ海での武力による露骨な現状変更の目論見である。これに対しもはや看過できないとみた各国が習近平指導部に対し非難の声を上げているのである。
コロナ禍の下で近隣諸国がその対策に追われている最中、コロナ禍を逆手に取るかのように、習近平が「中国の夢」として「中華民族の偉大なる復興」を掲げ、世界大国の実現に向けてがむしゃらに突進している感がある。その結果、米国を始めとする各国との深刻な対峙が不可避となるのではなかろうか。攻勢一辺倒の感のある習近平がこのまま「中国の夢」の実現に向けて突き進むことがあれば、大破局を招きかねないことを気付いていないのであろうか。(おわり)
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