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2021-10-26 00:00
台湾有事「核の傘」選択肢に
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
最近、台湾をめぐる情勢が緊迫化している。台湾海峡では10月1日から4日にかけて中国軍機149機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入し、台湾を軍事的に威嚇した。また、中国軍は台湾上陸作戦の演習を公開した。米国のインド太平洋軍司令官は中国による台湾侵攻を「6年以内」と明言している。これは、中台及び米中の主として通常戦力における中国優位への軍事バランスの変化を念頭に置いた警告であろう。台湾政府も危機感を持ち、台湾国防部長は、10月6日「中国人民解放軍は2025年までに本格的な台湾侵攻の能力を持つ」と警告した。
このように、「台湾有事」すなわち、中国による台湾武力侵攻の危険性が、昨今、国内外で盛んに指摘されている。わが国においても、主として保守系の論壇で「台湾有事は日本有事」として、日米同盟の強化を含め、防衛力・抑止力の強化の必要性が強調されている。「台湾有事」の危険性が否定できないのは、習近平政権が、「台湾武力解放」の方針を放棄しないからである。習近平氏は、2019年1月2日、将来の台湾統一に向けた方針について演説し、「武力の行使を放棄しない」と明言し、軍事力を急速に拡大増強していることは周知のとおりである。
この情勢を受け、2021年5月12日、菅前首相はバイデン大統領との「日米共同声明」において、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。これは、「台湾有事」を想定し、日米が連携してこれを抑止する趣旨のものである。台湾が「武力解放」されるのは、価値観を共有する同じ自由民主主義国家として容認できるものではなく、また台湾海峡や南西諸島の安全が直接脅かされる事態は日米にとって死活的な問題となりうるだからだ。しかし、遠くない将来、台湾海峡における米台の軍事的優位性が損なわれる可能性は高く、通常戦力のみによる「台湾有事」の抑止には限界があると言えよう。
したがって、「台湾有事」を抑止するためには、米国による台湾への「核の傘」の提供の示唆が最善の方法であると筆者は考える。以前、筆者が日本の事例において言及したニュークリア・シェアリングにも通じる考え方だが、核兵器がちらつく台湾への中国人民解放軍による武力侵攻は、通常兵器しか保有しない主体へのそれとは生じるリスクが段違いになる。この場合、実際に「核の傘」が米台間で約束されているかは重要ではない。なぜならば、このような事態を想定せざるを得なくなった時点で、中国にとって台湾有事は通常戦力における彼我戦力差を度外視すべきほどに極めて冒険的なものとなるからである。台湾が通常戦力で中国に対抗するのは将来的に不可能であるとの厳しい予後を踏まえて、より踏み込んだ対策を打つことはやむを得ない。世界的に核廃絶運動が盛んになっているとはいえ、現下の厳しい東アジア情勢を踏まえれば、核兵器に関する議論もタブー視するべきではないはずである。
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