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2021-10-19 00:00
危機のリーダー
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
『文芸春秋』11月号の記事「危機のリーダーの条件」は、JR東海名誉会長・葛西敬之、経営共創基盤グループ会長・富山和彦、読売新聞グループ本社会長・老川祥一・慶応大学教授、片山杜秀と上滑りの論客ではない真に内容のあるお話が多い方々の座談で興味あふれるものがある。富山氏は、「生きるか死ぬか」の体験がリーダーの器量を作る。チャーチルがボーア戦争で、ドゴールが第一次大戦でともに捕虜となり、九死に一生の体験を持つと述べている。日本人では、吉田茂と岸信介の両氏に点数が高い。二人とも投獄経験者で似たものがある。両名は、その政策は、外向きで、世界的な流れを読み取ることでそれに合わせて日本という国家ヲ「リ デザイン」した。吉田は、軽武装、経済重視、岸は、日米関係を対等なものに戻し日本の独立性をハッキリさせた。
筆者は幸運にも、お二人にお会いしている。もちろん、末席で遠くから拝見したのだ。ぼんやりとした思いしかないが、周囲が皆緊張していたのを感じていた。気のせいか、両氏とも、末席の筆者に優しいまなざしを投げてくださった気がする。岸さんとは台湾でお仕事の手伝いをしたので数回同席した。ある時、岸さんが一番若い小生に声をかけ、「--さんは、一番若いから、こき使われるかも知れないが、手に余る仕事が押し付けられ、もうだめだと感じたら遠慮なく私に言うか、秘書のーーさんの部屋に行き隠れなさい」とお話になった。その数年前まで、60年安保改定騒動で、岸は強権的でけしからんとのマスコミの論調をそのまま信じていたので、その違いに驚いた。岸さんは食事の時もユーモアーあるお話ぶりで皆を楽しませてくれた。自分は閣僚時代に、胃腸を壊し困ったが、毎晩宴会には出なければならないので治療できなかったが、巣鴨に入り、毎日規律正しく質素な食事ですっかり調子を取り戻した。とか、年を取ったのでこれからは、風邪ひくな、転ぶな、義理をかけ(葬式などには出ない)で行くのだなど述べておられれタのをぼんやりと記憶している。
吉田さんとは、たった一回きりなので、もっと記憶が不鮮明だが、確か、「自分は天国泥棒をしてやるんだ」とお話になっていた。吉田夫人の雪子夫人は、戦後すぐにお亡くなりになった。同夫人が敬虔なるカトリックの信者であられたので、芸者遊びなどで、夫人をおざなりにしていた罪滅ぼしと、その死の直前に洗礼を受けられたそうだ。愛弟子の佐藤総理のご夫妻が、武道館での国葬の後、護国寺の近くの、東京カテドラル教会での葬儀ミサに参列されいる写真が残っている。岸さんが述べておられたが、吉田さんは、生前、伊勢の神主さんたちの大学の皇學館大学の名誉学長をなされいたので、困った大学側から懇請され、その後任を引き受けたそうだ。『文芸春秋』で報じていたが、宗教については、吉田家内で色々騒動があり、今は吉田茂は仏教徒としてお墓に入っておられるようだ。
コロナ騒動の前にであるが、中国人学者の一団を連れて、大阪にある住吉大社を参観した。その貴賓の間に、住吉大社は、外交の祖であるとの吉田の書があった。係りの方の説明では、かって大阪湾は、大社の近くまで来ており、平安時代は、そこから遣唐使の船が出たそうだ。その船には、航海の安全を祈り、必ず大社の神主が2名乗り、途中の回路の平穏を祈った。海が大荒れの場合、祈りを捧げ、最後は海に身を投じて船の平安を果たしたのだそうだ。吉田は、政治外交は命がけだと述べておられるのだ。最近英国において保守党の議員が痛ましいテロの犠牲となった。その前には、労働党の議員が2名が犠牲となっている。こうした現象は世界に伝播するので今健闘されておられる各国の政治家のご無事を祈りたい。
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