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2021-10-15 00:00
欧米と中国本土について
真田 幸光
大学教員
私は、英国のエリザベス女王陛下は、「中国を再び眠れる獅子としなさい。」と仰っているやに聞いています。こうした中、その英国のみならず、ドイツ、フランスもインド・太平洋を目指して東進しています。そして、これら欧州列強が東進する背景には、中国本土の、「乱暴な浮上」を阻止し、同時にこの地域が米中覇権争いの舞台になりつつある現状も阻止したいとの狙いがあるとの見方も出ています。更に、世界経済の中心軸が大西洋からインド・太平洋に移りつつある今の状況が明確になったことで、自分たちが、このままでは世界の中での立ち位置を悪化し、「脇役」へと追いやられることへの危機感も出ているとも見られています。
そして、実際に、例えば、フランス政府・外務省は、「インド・太平洋一帯は貿易と投資の比重が高まり、世界化の最前線になりつつある。」との考え方を示唆しています。こうした一方、中国本土は欧州の主要国がアジアに目を向けていることへの反発と警戒心を強めています。かつて、アヘン戦争に代表される英国が仕掛けた罠にはまり、清が没落、その後19~20世紀、欧米列強の中国本土進出の痛い歴史を持つ中国本土は、これに関連付けた欧州批判も行っています。例えば、中国本土国営の「グローバル・タイムズ」(環球時報)は、「英国とフランスはアジア・太平洋の植民帝国だった。」と非難しています。
但し、その上で、グローバル・タイムズは、「自国の利益を追い求める欧州諸国は米国の望むようにただ参加はしないだろう。」との見方も示しており、実際にこれらの国々は巨大な中国本土市場を念頭に必要以上に中国本土を刺激しようとはしていないとの見方も示し、米欧の仲間割れを誘引するような対応もしようとしています。
即ち、中国本土の基本認識の中には、「欧州にとってより大きな軍事的脅威は中国本土よりもロシアである。」というものもあります。その為、今年6月に開催されたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議では英国のジョンソン首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相はいずれもバイデン大統領が訴える対中強硬論に対して「調整」を求めたとの認識も中国本土政府は示しています。バイエルンを派遣したドイツ政府・国防省も、「南シナ海で中国本土との対決を助長する計画はなく、誰もが航海できる商業航路を利用する。」とコメントしていることなどを受けて、米国とは異なる対中姿勢を取っていると中国本土政府は認識しているようです。はてさて、独仏のみならず、英国も米国とは異なる対中姿勢を示すのか、中国本土を意識した米英連携は一定程度示されるのかなど、今後もたくさんのチェックポイントがありそうです。
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