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2021-10-09 00:00
岸田政権の対中外交について
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
報道によれば、8日に岸田首相は、中国の習近平国家主席と電話会談を行った。米のVOAもさっそく伝えている。標題は「両国は対話」というものだ。一部米の知識人には、そもそも安倍政権は本当は米中の間を揺れる隠れ親中国ではないか、との見方もあることを、われわれは心しておかねばならない。米は、日米豪印の4カ国の「クアッド」にプラスして、急遽米英豪の「オーカス」の枠組みをうちだした。これは、前者よりかなりというか、全面に軍事面重視だ。後者は、インドは以前から中立的な姿勢に傾きがちだし、日本は憲法問題、また国際常識からだいぶ距離のある核や軍事アレルギーの存続など、この面では口ほどではないとみなしているようにも思える。
以前の自国だけで世界の警察官を任じていた米だが、さすが最近は勤続疲労から、重層的な安全保障の枠組みを目指すようになってきている。米政権は、あれほど一時は強硬に出ていたファーウエイの最高財務責任者の孟晩舟を、司法取引で中国へ帰した。国際雀たちには、米の敗北だとはやしたてる ものもいる。ある米の学者の個人的な見方を紹介すると、そもそも安倍政権は2006年に長い小泉政権の後に登場した。小泉政権は、典型的なポピュリスト政権で、かなり激しい国内外の政策をとった。その一つが、靖国参拝を毎年行うなど、喧嘩外交であった。安倍政権は、日本の戦後の政権としては異例な初めての海外訪問先に中国を選択した。冷え切った日中関係再構築のためだ。日中首脳は、両国のともに抱える課題の解決に取り組むことで合意した。いわゆる「戦略的互恵関係」の枠組みだ。
しかし、相手のある国際問題はそう簡単に物事は進まない。安倍政権は、本人の体調不良で短期間に終わり、その後の自民党政権、民主党政権とも毎年日本の首相が代わる状況で関係改善はなかなかうまくいかなかった。その12年以上の間に、以前食い込んでいた日本の中国での利権は、欧州などの企業に持って行かれた。安倍は、第二次政権では中国側に冷たくあしらわれてもくじけることなく、しぶとく中国訪問を繰り返した。そして、習近平の笑顔での握手を勝ち取り、日本への訪問も実現するかもしれない状況にまで持つていった。経済が日本を追い越すとその勢いはすさまじく、圧倒的なその資金力のもと、新興国、途上国でのインフラ整備などを進めだした中国。それはかって日本が、景気のいいときには得意の分野だった。登り竜の中国だが、慎重な人間もいて、例えば李克強首相は、若き日、日本の通産省の外郭団体により招待され日本各地を回り、日本への思い入れも深く、日本との連携に力点を置く政治家だが、日本を訪問し安倍総理と会談し、安全保障、社会保障、文化など各分野での広い範囲での協力の枠組み作りが始まっていたのだ。
その頃中国の打ち出した、2025年ごろには、途上国への10兆ドル資金提供の構想には、だいぶ届かないまでも、日本も官民での500億ドル支援などの資金提供も発表していた。しかし、その後の状況はご存じの通り、コロナ禍になやまされ、習近平の国賓としての日本訪問も、うやむやになっている。報道によると、習近平は今回の電話会談で、中国と日本はおたがいに協力関係の維持をすべきで、その関係発展は、お互いの国民の根本的な利益だ、来年は日中国交正常化50年だ。その来年に向け、お互い初心に帰ろうではないかと述べたと言われている。
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