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2021-09-16 00:00
EUの台湾との関係強化について
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
最近の報道では、EUは人権や民主主義をめぐり、中国との関係が非常に悪くなり、当てつけのように台湾との関係を重視しだしているとうるさいばかりに書き立てている。貿易や投資協定を結び、台湾との出先機関、国交があれば大使館となる、の名称を欧州経済貿易FFICE
を「EU OFFICE」に変えたなどと、さも大々的に外交姿勢を変えたという口ぶりだ。しかし、海千山千の西欧諸国だ、そう単純な話ではない。台湾との名称問題で当初一番悩んだ、いや、悩まされたのは日本であった。同じく漢字を使い、中国との関係では戦争での後遺症も色濃く残りピリピリしていた。台湾側の希望する中華民国日本交流協会はもちろん、日本台湾交流協会に対しても、中国側は頑として聞き入れなかった。今でも、この前東京で開催された五輪でも台湾の名称は禁句だ。台湾のチームはチャイニーズ台北で登録されている。日本の粘り強い説得や時代の流れの中で、世界で台湾の名称が大ぴらに使用できる空気となった。72年の日本と台湾の交流では、ただ「交流協会」と日本側は名乗ったのだ。一般の人々からは、男女交際のあっせん機関と間違えての問い合わせが多かったという笑い話的なエピソードもあるぐらいだ。
新型コロナウイルス禍や行き過ぎたグローバル化への反省などから、コロナ対策も経済の供給網もより多極化の必要が迫られてもいるのだ。いま世界的に不足の半導体について、強い能力のある台湾が名指しで求められることは当たり前なのだ。これらの件につき東南アジアの研究者と会話したのでご参考までにお知らせしたい。米やEUの人たちと最近話していて面白いと思うのは、常に中国を意識して、協定の語句などを、急にこれは中国を刺激しすぎるからやめるなどとピリピリしていることだ。我々に対する態度も以前の傲慢不遜な態度が減ってきた。西側を選ぶか中国を選ぶかの状況にならないように気を遣うようになってきた。
新聞報道で、英国が中国の制裁に抗議して中国大使の英国会への立ち入りを禁止する措置をとった、とでかでかと出ている。しかし、これは中国にとり痛くもかゆくもない話だ。大使が国会議事堂に行かなければよいだけだ。そもそも、英は、日本などがあれだけ止めたのに「一帯一路」の中核をなす金融機関のAIIBへの参加を真っ先に決め、ほかの西欧諸国の参加の姿勢を勢い図かせた。英は、この前のG7首脳会議に、日本とけんかの最中の韓国を同席させた。彼らの植民地政策では、その土地の反対派グループをうまく操り統治する手法がもっぱらだ。英国や西欧では、ロシア、その専制政治手法に対しては、国内で二重スパイだったロシア人が殺されるなど、肌身に染みてその恐ろしさを理解しているが、中国の専制政治には遠い国の話として今まであまり切迫した感じがなかった。
それがどう変わるか見てのお楽しみだ。中国人学者と会話したが、彼は反権力側にいるので、今の政府はネットの統制強化など、中国共産党への批判を一切許さないとの文革時代への逆行とも取れる動きで、反知性主義跋扈が心配だと漏らしていた。西側も中国もそれぞれ悩みをかかえこれからの世界の動きは予断を許さない。ASEANと日本、中国、などでRCEP(地域的な包括的経済連携)の合意を見たが、まだまだ発効までに時間がかかりそうだ。日本やこの協定を極めて重視している中国とシンガポールしか国内手続きを終えていない。中国としては、米の中国包囲網ができないうちに、この枠組みを活用したい思惑があるのだ。
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