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2021-09-12 00:00
米のアフガン撤退後の世界情勢
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
米のアフガン撤退後の世界情勢は、まだ混沌として今後の予断を許さない状況だ。これに関して、12日の産経新聞の黒瀬ワシントン支局長の記事は、内容の充実した参考になるものだ。「(米がアフガンから撤退し、外交・安全保障政策で対中国を最優先させることは、アジア太平洋地域にいる日本にとり朗報であるものの)米軍のアフガン撤退が地域にもたらした『力の空白』は、世界にとっての『落とし穴』となりかねない」、「世界の反米イスラム主義勢力の『勝利』とみなし勢いづくテロリスト」「(彼らは)アフガンだけでなく、シリアやイラク、アフリカのサヘル(サハラ砂漠南縁地域)などに拠点を拡散させる(恐れがある)」「中国が中央アジアでの経済権益の確保に向け、タリバンの後ろ盾であるパキスタンを通じてアフガンに影響力を行使の事態も」「パキスタンがタリバンの実権掌握を『インドに対する勝利』と位置づけ、カシミール問題でインドに軍事的圧力を強めてくる公算も大きい」「そうなれば、日米豪の『クアッド』の枠組みなどを通じて中国に向けられた関心が、パキスタンとの伝統的な敵対関係に集中してしまう恐れも」。
16日から2日間の日程で、タジキスタンの首都ドゥシャンベで、中国やロシア、中央アジア諸国などが加盟する上海協力機構が首脳会議を開く。日本の報道では、この会議で中ロが、アフガン問題で結束を図るとしきりに強調している。しかし、この機構には2017年にインドとパキスタンも加盟している。ちなみにアフガンはオブザーバーとして参加している。インドは中国、パキスタンと領有権をめぐり衝突が続いている、物事はそう簡単ではないのだ。
この件で、米の識者と会話した内容を少しぼかして参考までにお知らせする。今、米が「自由で開かれたインド太平洋」の旗印のもと、中国包囲網を巡らせつつある中、アフガニスタンの中国側への姿勢は、中パ経済回路の強化、すなわちパキスタンのアラビア海のグワダル港から物資を中国本土へ運べることとなる。インド洋ルートを使わなくても済むのだ。との筆者の問いかけに。識者は「もの事はそう簡単ではない。この経済回廊は、パキスタン国内でも治安の悪いことで有名だ。国内の民族紛争地域である。地方は、中央政府に異議申し立ての声は常に大きい。中央政府と親密な中国へも敵対的だ。中国人殺害事件もたびたびだ。ロシアは伝統的にインドへの軍事品輸出が大きい。かって痛い目に会ったアフガンから一歩引いて、漁夫の利をどうやってつかもうかと構えているのだ。
また、中国の政治体制をよく考えてみるがよい。中国共産党組織がすべてを支配、指導する独裁主義国なのだ。一方、タリバンはじめアフガン側のグループは、宗教が第一にある。政権が宗教の権威の上にある中国とは水と油の関係だ。当初は、政権発足のために経済的利益のために中国と手を握っても、いずれ衝突するだろう。中国もバカではないので、これを計算済みだろう。
恐れるのは(識者及び米国が)、アフガンの治安がまた混迷に陥り、20年前の反米イスラム主義、過激派の世界での再びの台頭だ。
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