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2021-08-31 00:00
(連載1)喫緊の課題としての気候変動問題
鈴木 馨祐
前外務副大臣
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第六次評価報告書第Ⅰ作業部会報告書(自然科学的根拠)が公表されました。今年が気候変動対策においてG7、G20、COP26と一連の国際会議を含め極めて重要な一年といわれている中で、極めて重要な報告書です。様々な科学的検証、分析が行われている本報告書は、気候変動が人間の活動によるものであるということ、人為起源の気候変動が様々な分野に実質的な影響を及ぼしていることを明確にしています。15年ほど前、衆議院議員一期目の時に気候変動に関する本を出版もしましたが、それ以降も様々なところで申し上げているように、私は、気候変動の問題、それに対する対策を考えるときに我々は三つのポイントを常に意識しておかねばならないと考えています。
まず、我々が認識しておかねばならないのは、気候変動がもたらす影響は、単純に1.5℃や2℃気温が上昇するだけではなく、様々な事象が極端化するという事であり、その影響は極めて広範に及ぶという点です。海水温の上昇により雨の降り方が極端になることは皆様も感じられているところだと思いますが、干ばつ・大雨といった異常気象が頻発するようになり、また場所によっては寒冷化する、あるいは海流の変化により従来の気候が大きく変化する地域も出てくる可能性が高い。また内陸部の夏の日中の気温は当然地球全体の平均よりも上昇する可能性が高く、そうなれば植生の変化が気候の変化についていけず、食糧生産にも大きな影響を与えることとなります。気候をマイルドにする地球のシステムが変調をきたせば、それがわずかなものであっても、人類が生存するのに適した絶妙な均衡を崩すことにもなりかねません。
そして、次に我々が気をつけるべきは、気候変動は加速するという事です。海水などで吸収できる温室効果ガスの量は海水温の上昇や溶け込む量の増大により、どんどんと少なくなっていく可能性が高い。そして、例えば北極やグリーンランドの氷が融解すれば地球の表面が黒くなることで熱をより吸収するようになる等々、様々な要因で一定のポイントを超えれば、温暖化は加速度的に深刻化するという点です。
三つ目のポイントは、人類の行動変容により温室効果ガスの削減を行っても、そのことが気温の上昇を食い止める状況になるにはタイムラグが生じるという事です。こうした時間差にも留意する必要があります。(つづく)
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