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2021-07-27 00:00
(連載1)日本はサイバー脆弱性の危機意識が極めて低い
岡本 裕明
海外事業経営者
英国の国際戦略研究所(IISS)が発表した世界各国のサイバー能力に対する評価では日本は3段階で最下位の第3グループとしています。第1グループはアメリカだけで第2グループに中国、英国、イスラエルなど諜報が長けている国が並びます。その点では第3グループは致し方ない、とみられるかもしれませんが、韓国のメディアは日本がやはり第3グループとされた北朝鮮と同じレベルだと指摘しています。
サイバーを含むテロに対する日本全般の危機意識は極めて低いと言わざるを得ません。911事件以降、日本もテロの標的リストに挙がったりしたのですが、特段目立った事件は起きませんでした。当時、テロ標的のリストに日本の名前が挙がったのは日米同盟という蜜月の関係から敵が多いアメリカと一心同体ゆえに攻撃対象国になりうるという解釈でありました。ただ、当時のテロの加害側であるイスラムの原理主義派からすれば日本を標的にするモチベーションはほとんどなかったわけです。「危ない」と言われながらも何も起きないと「オオカミ少年」の話と同じなのですが、いつかとんでもないしっぺ返しが来るものです。サイバーテロの場合、敵はロシアや北朝鮮よりも中国のサイバー能力が強大であり、かつてのイスラム原理派によるテロへの防衛の時代とは相手が違うことに留意しなくてはいけません。そして、記憶に新しいLINEのデータ管理の問題にもあるように日本は多くの企業が業務の一部を中国に回しており、そこでの管理が甘くなる傾向があります。「まさかうちの会社から」が起きていてもまったく気がつきもしないのが現状ではないでしょうか。
私は常々、日本も本格的な諜報組織を持つべきであるという持論を持っています。そして情報漏洩をした場合には重罪を課すという仕組みも必要です。そもそも、国連憲章でも認められたスパイ防止法がずっとなかったのが日本であります。そんな日本で2014年12月に「特定機密保護法」が成立したのは安倍元首相の強い信念があった故であります。1972年の沖縄返還の際の密約を毎日新聞社の西山太吉記者が社会党議員を経て国会で公表されたことで知られています。その情報源は密通にあった外務省局長の秘書の女性であり、この話を背景にした山崎豊子の「運命の人」という小説も生まれています。日本でスパイ防止法の必要性が叫ばれたのはこの事件を契機としており佐藤栄作首相(当時)が必死に訴えたものでした。
ところが日本はどうしてもスパイ=特高=治安維持法のイメージが強いのです。今ならどうかわかりませんが、1972年ではまだ戦後30年足らずで当時、嫌な思いをした人が声を上げやすい状況にあったのです。2014年の特定機密保護法は制限された形とはいえどうにか成立したのは戦後70年近くたち、当時の記憶も薄れる中、世の中の状況が激変したことはあるでしょう。それでも新聞記者を介した情報漏洩事件は今年4月に長崎新聞記者と女性警部の間でも起きています。更に一般人を介した情報漏洩は今でも起きており、ソフトバンク社員のロシア諜報への情報提供の事件などもありました。(つづく)
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