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2021-07-08 00:00
(連載2)中国共産党の「台湾解放」の現在地を見誤ってはならぬ
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
しかし、このようにひたすら軍事力の増強拡大を図る中国ではあるが、台湾の武力解放が現在及び近い将来に試みられる可能性はほぼないと筆者は考える。もちろん、中国共産党が「武力統一」を放棄したことはなく、常に武力を台湾にちらつかせてはいるが、現時点で台湾情勢が危殆化しつつあるわけではない。その理由は以下の通りである。
(1)台湾は人口2354万人、兵員189万人、航空戦力837、戦闘機286、戦車1885、主要艦艇87、軍事予算107億2500万ドルの戦力を保有し、カナダに次ぐ世界22位の軍事力を保有している(世界軍事力ランキング2019年版ビジネス・インサイダー・ジャパン参照)。また、半導体など世界トップクラスのハイテク産業を有している。さらに、香港や新疆ウイグル、チベットでの言論弾圧や人権問題などにより、台湾国民の中国共産党に対する警戒心や拒否反応は極めて強い。台湾は近年中国の軍拡に対応して、「台湾関係法」に基づき米国から地対艦ミサイルなどの最新兵器の導入を進めるなど、対中防衛力と抑止力の向上を図っている。このため、台湾単体で見てもその攻略は全く容易ではない。さらに、米国の「台湾関係法」は、台湾への武器供給や台湾有事の際の対抗措置を定め、台湾の独立と安全を保障している。したがって、中国にとっては台湾への武力行使の際には米軍の軍事力も想定に含まなければならない。
(2)中台間には幅約130キロメートルの台湾海峡が存在するため、上陸作戦を経験したことがない中国人民解放軍による台湾島への上陸作戦は困難を極める。特に台湾側からの上記地対艦ミサイル攻撃は上陸作戦の脅威となろう。また、上陸後の兵站・補給等も困難である。そのうえ、「台湾関係法」に基づく米海軍・空軍の来援は同島の防衛をより強固にするであろう。また、中国が核兵器を使用して台湾を無力化することが戦略的にありえないのは論じるまでもない。
このように、現時点では、台湾を武力解放するには人民解放軍の備えも国際環境も整っていない。よって、「台湾解放」は中国共産党のプロパガンダ(政治的宣伝)の域を出ない。もちろん、常に台湾情勢を見ていく必要はあるが、過度に恐れ誤った判断をしては本末転倒であろう。孫子の兵法にある「戦わずして勝つ」中国共産党の思う壺に陥るだけだ。日本にとってこの地域の平和的安定を維持する方法を追求することが有益であるということを忘れてはならない。(おわり)
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