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2007-07-24 00:00
「トウ小平モデル」から「胡錦濤モデル」へ
服部健治
愛知大学現代中国学部教授
中国といえば、いまや「安全性」に話題がつきない。2003年はSARS(重症性呼吸器症候群)、2005年は反日暴動、数年前は「脅威」。今年に入ってからは、Made in China に対する不安・不信はオンパレードの観を呈し、生鮮食品、加工食品から医薬品、日用品、玩具、タイヤにいたるまで、全世界で信頼性が揺らいでいる。
要するにくだけた表現でいえば、金儲けのため、いい加減なものを粗製乱造している中国人が多いということである。なぜこんなことが起こるのか。安全性に対する観念が希薄とか、監督制度の不備など、いくらでも指摘できる。ただ、問題の本質はもっと深刻だ。上層部がいい加減なことをしているが故に、庶民もいい加減なことに走るのである。つまり、政府(本質は共産党政権)が腐敗しているがゆえに、大衆も安全を無視し、自分勝手に金儲けをしようと蠢動するのである。「ミートホープ」の比でない。
しかし、「食の安全」のなど、かまびすしい話題の裏で中国は今、大きな転換点を迎えていることを見逃してはならない。それは新しい構造転換であり、政策転換でもある。一言でいうならば、「トウ小平モデル」の終焉と「胡錦濤モデル」の始動である。
1979年から本格的に始まった「トウ小平モデル」は「貧しさに耐える社会主義」の「毛沢東モデル」から「豊かさを求める社会主義」へと大きく舵をとり、市場経済原理と外資導入に支えられ発展した。国内統一市場の形成、国際経済との緊密化、高度経済成長、財の増大などの成果を挙げたが、同時に社会的公平性と連帯感を失っていった。揶揄して言えば、「旗は共産主義、しゃべっていることは社会主義、やっていることは資本主義、地べたは封建主義」と称することができる。
私が「胡錦濤モデル」と呼ぶ新たな発展モデルは、実は昨年から実行された第11次5ヵ年計画から始まった。胡錦濤・温家宝体制が確立する今年秋の第17回党大会で確固とした方針になる。その目標は、調和(和諧)社会の実現であり、共同富裕、量より質の重視ということができる。一言でいうと「等しからざるを憂える社会主義」と描写できる。背景には、中国の市場経済は未成熟で、社会構造上の欠陥が大きいといった現状認識がある。
高度経済成長でありながら、企業収益が低下し、格差が極端に拡大し、さらに失業が増大する経済構造。改革・開放も30年近くになるのに、いまだ世界的なブランド企業や商品が輩出していない。ここには何かが抜けているのである。具体的な方策では、内需喚起、環境保護、農村改造、法治主義などが強く打ち出されると予想する。「胡錦濤モデル」は概していうと、共産党一党独裁のもと、不平等の拡大を嘆く社会主義原理派と政経不分離を嘆く市場経済重視派の双方を満足させるエートスである。
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