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2021-07-01 00:00
(連載1)米国市民社会の危機
大井 幸子
国際金融アナリスト
今、米国では住宅価格が高騰しています。パンデミックとロックダウンで外出できなかったため、今までのライフスタイルを見直し、住み替え需要が高まりました。加えて、政治的な信条から、民主党色の強い州から共和党の強い州へ移住する人もいます。民主党の強い州では財政が逼迫し、税金が高く、パンデミック感染率が高いという傾向があります。これから増税が見込まれるカリフォルニアやニューヨーク州の都市部から、よりビジネスフレンドリーなフロリダやテキサスへ移住する人も多いです。
米連邦住宅金融庁によれば(5/25付)、住宅価格は前年同期比で12.6%上昇し、住宅価格の上昇率は2020年第1四半期の2倍以上と、価格はぐんぐん上昇しています。また、人気の地域は、年間の上昇率ランキングで見ると、1位アイダホ州 23.7%、2位ユタ州 19.2%、3位アリゾナ州 17.4%です。西海岸から自然豊かな山間部への移住が進んでいるようです。さらに、米国では人口動態の観点から、ミレニアム世代が家族形成の年齢になり、最初の住宅購入の時期に入っています。そのため、住宅需要が増え、供給が追いついていないことから住宅価格を押し上げています。中古住宅販売価格の中間値は30万ドル(3300万円)と、14年ぶりの高値です。現状、若い世代が住宅を取得するのは難しくなっています。仮に貯金を取り崩して住宅ローンを組んで家を買っても、長い間ローン返済の負担を背負うことになります。
このように、ライフスタイルに応じて移動できる人たちはラッキーです。実は米国では、ホームレスが増える傾向にあります。昨年ロックダウンで多くの人が失職し収入が激減しました。政府は緊急支援策として生活支援金や家賃補助の措置をとりました。住宅ローン返済ができない、家賃を払えないといった状況の人たちには支払いの猶予期間(モラトリアム)が設けられました。コロナ禍、多くの人々がこうした支援を受けて、生活をつないできました。
ところが、このモラトリアムは終わりに近づいています。生活支援金と家賃補助の給付はこの8月から9月にかけて終了します。また、家主や不動産オーナーは正当な家賃の支払いを求め、支払いができなければ「立ち退き」を求めています。そうしないと彼ら自身の事業経営が立ち行かなくなります。(つづく)
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