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2021-06-12 00:00
(連載2)ラーム・エマニュエル前シカゴ市長等に関する一考
中港 拓
北米欧州豪NZ情報分析者 /海外事業経営者
他方、批判一辺倒の方々には全く見えないようではあるが、高い評価も散見される。教育改革では、8年間で高校卒業率が50%台中盤から70%台終盤にまで上がったという数字がある。他でも、オヘア空港の6万坪拡大、シカゴ高架鉄道の主要駅での乗換連絡通路等の整備、シカゴ大火事の1871年にちなんだインキュベーター施設『1871』の設置、他にもテクノロジー産業や食料(ADMやConAgra)など各種企業のシカゴへの誘致、シカゴ川清掃及びリバーウォーク整備、大胆な増税等の財政再建努力などである。そして、バイデン大統領と相互をよく知っており、大使となった暁にはアメリカの意思がよく伝わる旨、今回名前が挙がった際にはあちこちで書かれている。なお、例えば、中国と近過ぎて駐日大使に適さないと批判しているとされる、共和党若手のホーリー議員は、ピカピカの経歴ではあるが、1月の首都暴動を煽っていたことで「将来、大統領に推される可能性を今回失った」などと大々的に非難され、地元ミズーリ州のみならず全国的に失墜した後、特に名誉挽回した形跡は無い。この意味では、批判の説得力も影響力も強くないと考えられる。同議員の全てを直ちに否定する訳では勿論あるはずもない上に、外国国内で起きた事案に直接的に反応すべきでもないが、同盟国とは言え非白人国である日本としてはアメリカの政治家が人種問題について見せる対応を把握しておく必要は有る、と個人的には考える。
また、そもそもアメリカを一定程度理解していれば分かるが、非白人が多い「民主党の街」では中国系アメリカ人も中国人も当然、政権与党有力政治家に近付いて行く。となると、全米第三の大都市のシカゴ市長も、特に米中関係が荒れた状況で無ければ普通に対応するのみであろう。その結果、色々と関係ができ上がることは想像に難くない。当然ながらバランスは問題になるにしても、政権与党、実務家であれば当然のプロセスである。日本人が勘違いしがちなのは、いったん関係を結ぶと未来永劫そのままであろうというものである。しかし、少なくとも、私が今までに見たプロテスタント的・アングロサクソン的白人は、概ねそういう感じではない。相手かかわらず、全体に速い。となると、中国系との付き合いも或る時を境に薄れ、勿論双方の努力次第であるが、暫く経つと日本との付き合いが深まっているというのは想像の範囲内である。
(「現市長どうですか」的な問いかけを敢えて自分からは常々しないようにしていたためか)私自身は、シカゴ市内のアメリカ人ビジネスマンからエマニュエル市長へのダメ出しは聞いたことがなかった。改革等の必要が差し迫っている場合には、政権与党現職である限り逃げられるはずが無いので、果敢に立ち向かって進めるしかない。基本的に何かを進めると批判も出る。進め方における各種のバランスは常々非常に難しいが、批判を聴き対処に努めることも含めた各種の客観的努力は続けるしかない。これらが政権与党現職についての個人的感想である。また、私はアメリカ人ではなく日本人なので、日本や自分に直接に関係しない事柄については、公には言及しないこともある。自分の立場や知識その他を鑑みて、言うべきは言うというのみであることも付言しておく。
ここまでに述べたことは、ポジティブ気味に評価した人物等についてずっとそのままにしなければいけない、ネガティブ気味に評価した人物等についても然り、ということでは決してない。政治家も、選挙職ではない大使も、公職中の公職であるので、完全に客観的である人間は居ないにしても、評価は事柄毎に是々非々であって然るべきである。米駐日大使はアメリカを代表して日米両国間の課題に日々取り組む責務を負っており、日本の国益とアメリカの国益が合わない場合には不協和音も出得る。仮に直接に大使本人に関係無くとも、大使への批判が着任後日本側から出る可能性はどの人にでもある。手法や表現を考えながらも、日本政府は言うべきことを常々遠慮無く駐日大使に言うべきである。このような考えの下で、誰が成るにしてもまだまだ今後長いプロセスと成り得るが仮に連邦上院での承認を経ていざ着任が決まったら、国内で政党や政治家を扱き下ろすのとは違うので、アメリカの代表者を尊重するという意志を明に暗に、マスコミを含めた日本側全体が最大限に出すべきである。日米関係を維持深化していくためにも、過去の穿り出しによる公的な批判を殊更に行うのは日本人全般に控えて行くことが国益国民益に資する、と考える。(おわり)
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