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2021-06-11 00:00
(連載1)ラーム・エマニュエル前シカゴ市長等に関する一考
中港 拓
北米欧州豪NZ情報分析者 /海外事業経営者
米駐日大使として指名されることが検討されている旨報道のあったエマニュエル前シカゴ市長について、最近少し関連英語記事も読んだので、また、シカゴに居た2012-14年のおぼろげな記憶を思い出しながら、差し支えの無い範囲で述べる。ご参考になれば幸いである。スピード感のあるヤリ手。経歴や逸話を見ても、話しぶりを聴いていても、そういう感じである。市長当時のテレビコマーシャルは、その性質が凝縮された印象であった。経歴を辿ると、シカゴ市生まれ近郊育ち、父はイスラエル生まれでアメリカの小児科医、母はユダヤ系でシカゴ市出身。20代後半でシカゴ市近郊の大学院で修士号を取得、デイリー元市長の長男デイリー氏の最初の選挙で陣営入り(その後22年間同氏市政となった)、その後ビル・クリントン民主党大統領候補(当時アーカンソー州知事)陣営に入り、クリントン民主党政権で大統領シニアアドバイザー。ブッシュ共和党政権時にイリノイ州5区(シカゴ市等。ブラゴジェビッチ知事の後継。)にて民主党候補として出馬し連邦下院議員に当選。3期6年務めた後、オバマ民主党政権でチーフオブスタッフ(議員経験者が就任するとも限らないが事務的職責自体は日本の内閣官房長官に類する)を1年9ヶ月務め、その後2011年に有効投票の過半数を得てシカゴ市長に当選、2015年に決選投票を経て再選。
政治家の短い公表経歴であるから特に引っ掛かる感じが無いのも普通ではあろうが、それにしても(とりわけ非世襲政治家としては)順調に来られた印象を受ける人も多かろう。実際、大統領選挙では野党候補者陣営に入り陣営は2度とも勝利し選挙後は政権(与党)内に入り、本人の連邦下院議員選挙でも自党が国政野党の時に自党優勢選挙区で盤石の当選。全米第3位の人口を有するシカゴ市長選挙では、上記元市長の支持も当然得て初選圧勝、再選もされ8年間同市で政権与党を担った。他方、確かに、英語記事において最近も色々と批判が書かれており、自党系内左派(字数の関係上、単純に左右で分けないのは別の機会とする)からのものが少なくない。
左右については日本では、従来の日本人的な普通の感覚によると、自民党が右から中道、野党が中道から左、であろう。他方、アメリカの政策の現実としては、税制にしても健康保険にしても軍事にしても、共和党の中軸は自民党の右よりももっともっと右にある印象である。民主党の中軸も軍事など政策によっては自民党より右と言え、全体として日本の自民党にとっては政策面では、労働組合が最大級の支持母体となっているアメリカの民主党のほうが距離感は小さい印象もある。アメリカでは民主党と共和党が同じくらいの時間の長さで現実に政権与党を担ってきたことが大いに関係していると推察する。
尤も、政策等の責任を自分が取ると毎日考えている政治家以外は、与党も野党も変わらない面もあろうが。その中で、エマニュエル氏は、黒人層や民主党内左派からの批判等を度々浴びて来た。例えば、シカゴ市長時には、そもそもの教育改革姿勢自体がシカゴ教員組合等から気に入られず、公立小学校等閉鎖・再編等については激しい反対に遭った。実際、初選時には黒人層60%台の支持があったのに再選時には40%台となったという数字もある。そして、白人警察官による黒人未成年の射殺については、ボディカメラ映像の公表が再選後となったことへの激しい批判が続き、3選不出馬・合計任期2期8年となった。(つづく)
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