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2021-05-19 00:00
ワクチンは国家戦略物資である
古閑 比斗志
医師
現在の日本において、新型コロナウイルスワクチンは自給できていない。在留邦人に対してもワクチンを供与出来ない現在、ワクチンや医療資器材は国家戦略物資である事が再認識されたのは自明の理である。日本の国内に存在しない疾患に関しては、我が国のワクチン会社は前向きではない。我が国の需要が満たされれば良いと考えているのであろう。生産余力はほとんどなく何かしらの原因で生産ラインが止まると国内需要を満たすことが出来なくなる。
諸外国のメーカーは先進国では高く販売し新興国では余剰品を安く販売している。世界の製薬メーカーはグローバル化しており、日本の製薬メーカーも以前から合併の嵐にさらされてきた。武田が最高9位である。我が国は、国内メーカーを吹き荒れる嵐から守り支える必要はないのであろうか?私は世界的な潮流から外れているかもしれないが、慣れ親しんだ日本の安心安全な皮下注射のワクチンが大好きである。確かに日本国内の感染症の流行状況は非常にコントロールされている。しかし一歩海外に出たらどうであろう。新興国では上下水道等のインフラが追い付かず各種感染症が流行している。アジアで流行している感染症対策は、WHO西太平洋地域事務局(WPRO)と日本が率先して担うべきである。
ワクチンや薬剤に関して、最近は中国の台頭が著しい。外交戦略として中国は先進国の工場を自国に招いた。日本や欧米先進国の会社が挙って中国に進出した結果、今や中国は世界の工場である。これらの工場は欧米諸国の基準で生産を行っており輸出が主となっていた。ところが今回のように、中国国内で新型コロナウイルス感染症が流行するとどうであろう。自国で生産している医療資器材の輸出を止めたのである。日米欧の会社は中国政府のコントロール下におかれ輸出が出来ず、製品は中国国内への供与に回されたのである。
危機管理上、有事において我が国の需要が満たされなければならない。備蓄をするか、生産を日本に回帰せしめ、今回のような状況では余ったマスクやワクチンは海外に供与すればよいのではなかろうか。日本は、アジア諸国からの協力を求められる立場である。ところが、日本製の安心安全なワクチンは日本国内で消費されているだけで残念ながら輸出されていない。25年前から日本メーカーのワクチン価格は、欧米のメーカーが途上国に供与する価格と比較すると非常に高価であり、日本政府はODA資金を供与するが、欧米のメーカー名のワクチンがユニセフの名前で供与されているのが現状である。我が国の顔の見える援助が必要であろう。今回の新型コロナウイルス感染症パンデミックを契機に我が国も国家戦略を見直す必要があるのではないだろうか。(参考文献「ウイルスと外交」扶桑社新書 2020年9月)
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