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2021-05-19 00:00
(連載2)混沌とする中東情勢の向かうところ
岡本 裕明
海外事業経営者
その行動の一つが対イランで、バイデン氏がイランとの融和政策をとることにイスラエルは強く反発、諜報組織であるモサドが暗躍しイランの原子力核施設を破壊しました。ユダヤ人はその歴史からして誰かに頼れないという危機感を常に持っています。つまり行動意識が非常に高く、それを制御するのも難しいという特徴があります。「騙されない」という意識を持ち続けている以上、自分たちが勝利するまで手を抜かないというのが原則論であります。今回のガザへの攻撃も駐米イスラエル大使が「平静を呼びかけるイスラエルの指導者と、ロケット弾やミサイルを発射する扇動者やテロ組織を声明で同列に並べることはありえない」(日経)と一歩も引く気配を見せません。
ではパレスチナの方はどうかと言えばこちらもオスロ合意当時のPLOからテロ組織とも称されるイスラム原理主義のハマスが政権を握るようになりイスラエルとの間では些細なトラブルから大規模な衝突になるということが繰り返されています。それでも今までは一定の抑止力がありました。国際社会の力や監視の目であります。ところが現在はコロナ禍でどの国も自国の管理で精いっぱいなのです。この中でいち早く正常化に向けてワクチンを接種し、攻撃態勢を整えたネタニヤフ首相は多分、トランプ政権後のイスラエルの立ち位置を事前に予測し、ワクチン接種がイスラエルを軍事的な強化となるぐらいの考え方だったのだろうと思います。
ネタニヤフ首相は「まだまだこれから」という強い姿勢で今回の交戦は2000年10月以来の規模とされます。最悪、地上戦ともいわれています。これを誰が抑止できるか、ですが、アメリカの動きは口先介入で効果はいま一つです。バイデン氏に行動力がなく、腰が重い様子が見受けられます。一方、リアクションが早かったのがトルコのエルドアン大統領で既にプーチン大統領と電話でイスラエルへの強力な抑止への協力を求めています。
中東の事変は日本にとってもっとも縁遠いことの一つとされます。しかし、今回の戦闘では既に多くの子供も戦闘に巻き込まれ亡くなっています。イスラエルには厳しい視線が向けられそうですが、国際世論がそこまで盛り上がらないのはもちろん、世界に散らばるユダヤ系組織が抑えるべきところを抑えているから、であります。エジプトが仲裁に入るのか、トルコが動くのか、はたまた抑制が効かなくなるのか、国際社会は今日も揺れています。(おわり)
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