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2021-05-13 00:00
荒木和博氏の「アメリカは信じられるのか」を読んで
中山 太郎
団体非常勤職員
本欄での荒木和博 拓殖大学教授の文章はいつも簡潔明瞭で歯切れよく、熟読玩味するのが常だが、4月26日付「アメリカは信じられるのか」の論も痺れるうまさだ。同氏の学生は今彼の話を面白く聞いていても、社会経験を経なければその内容をよく理解できないかもしれないが、人生のいつかの時点で、あの時先生はこういう意味でおっしゃったのだと気が付くのだ。今回の同氏の「絶対に裏切らないのが親友ではない。裏切られても仕方がないと思えるのが親友だ」は名言だ。「例え期待した通りに相手が動かなかったとしても、自分が揺るがないようにしておくことが信頼関係を健全にし、より大きなことを成し遂げる助けになる」はうなずくところ大だ。
日本にとり米か中国かの選択で、米を取る道しかないのだ。共産主義中国に長いこと暮らし、友人もいるが、日本人には耐えられない社会だと思っている。最近の読売新聞の「地球を読む」の論述で北岡伸一東大名誉教授の述べるように、4月16日の日米首脳会談で、日米の緊密な協力をうたったことは、(中国との)紛争を下げる効果があった、との論は誠に正論だ。同教授は述べる「ただ、共同声明は到達点ではなく。出発点である」として、対中安保戦略での「守るだけ」からの我が国の政策転換の必要を述べておられる。「中国の軍事力は巨大で、国内で三沢や嘉手納を想定した攻撃の訓練をしている。
日本は、ミサイル防衛だけで守るのは無理である。万一攻撃されたらただちに相当の反撃が出来る体制を整え、日本への攻撃はコストが高いと思わせる必要がある。」の論は、一般の日本国民にとり苦痛でもあり多くの困難もあるが何とか耐えてやり抜かねばならない。同氏は、また、「中国批判についても、挑発は避け、中国側が野蛮で下品な表現で日本を批判しても、穏やかに文明的な言辞で対応すべき」とし、「米国が突然政策転換して中国と手を握る可能性も絶無ではない。」、そうした時中国は「米国の政策転換を受け入れるだろうが、米国に同調していた国を簡単には許さないだろう」と推察している。確かに共産主義国家は強者には卑屈でも、少し弱いとみるとかさにかかってくるところが常だ。北岡氏は力説する「安全保障政策をより実効性のあるものに高めること、日本の中国批判は公正な原則にのっとり、世界の共感を得られるものとすること、同時に、中国と対話の道を閉ざさず、再考を即していくこと」。
この話から思い起こされるのは、今のコロナの前触れとも言うべきSARSが、2000年代のはじめ中国南部の広東省から端を発し。北半球のインド以東のアジアとカナダを中心に約32の五地域や国々へ拡大した際。今、我が国のコロナ対策の専門家の分科会会長として、心無い一部国民からの批判を受けつつ、苦闘されておられる尾身茂氏が、当時WHOの西太平洋地域の責任者として広東省へチームを引き連れ来訪し、獅子奮迅の活躍で、大いに中国側を支援したことは、その頃現地にいた西側の人々もよく知るところだ。その他の日本の官民も、国立感染症研究所の専門家を複数派遣するとか、医療関係物資の緊急支援などきめ細かに対応した。中国側のSARS担当だった、呉儀副総理やその上司でもある、温家宝総理などが人民日報などで、日本への感謝の言葉を述べている。もちろんこうした感謝の念と裏腹に中国の国策として,その後のWHO本部の事務局長選挙での、尾身氏ではなく、香港出身のマーガレット・チャンを強力に押し立て、当選させたのだが。
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