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2021-04-15 00:00
(連載2)’平和裏’に併合されたウイグルの教訓
倉西 雅子
政治学者
大戦の混乱期にあってイリに拠点を移していた東トルキスタン政府の幹部が毛沢東の招きで北京に向かう途中で行方不明となり、イリに残っていた幹部の一人であるセイプディン・エズィズィという人物が北京に出向いて共産党政府への服属を表明したことで、併合されてしまったのです。チベットもまた、軍事同盟、あるいは、保護条約に近い内容であった『十七協定』が詐術的な手法で締結されたのを口実として、中国が併合してしまった国です。両国とも、中国と武器を以って闘ったわけではなく、‘平和裏’に併合されているのです。
人々の目を欺くような’合意’を演出した後、中国は、これらの諸国に人民解放軍を侵攻させ、一切の抵抗を廃してしまいます。チベットでは、土足で踏み込むような人民解放軍の進駐軍を前にして’熱烈歓迎’の横断幕が掲げられたそうです。そして、戦いなき’平和裏’における併合の結果こそ、今日のウイグルであり、チベットなのです。中国にとりましては、孫氏の兵法そのものを実践したこととなり、他国支配の成功例なのでしょう。
そして、これらの成功体験に味を占めた中国は、日本国にも対しても同様の方法を試みることでしょう。近い将来、国民の合意を得ずして、もしくは、民意を無視して、日本国内の政治的混乱に乗じた政府内部のとある親中派の政治家、もしくは、国権と近い関係にあるとある勢力の’特使’が北京に赴き、習近平国家主席を前にして服属を誓うかもしれません。日本国には、自らを人民解放軍の野戦司令官と称した政治家もおりましたし、菅政権にあっても、親中派の政治家が幅を利かせています。あるいは、平和的な解決の名目で、日中間にあっても『十七条協定』が締結されるかもしれません。無法国家である中国に対しては、国際法も無力なのです。
歴史に刻まれた忌まわしい事実は、日本国による対中融和政策が無駄であることを物語っています。融和政策は中国に対して民族浄化のチャンスを与えるに過ぎず、中国は、’日本人’という存在を決して許さないからです。戦っても融和しても命を失うのであれば、前者の方が遥かに’まし’というものです(かつてモンゴル軍の侵攻を受けたフランスでは、国王が、座して死を待つよりも、戦うことを選択して国民を鼓舞したことにより形勢が逆転)。正義のために戦うのですから。このように考えますと、日本国の対中政策における選択肢は、抗中一択なのではないでしょうか。そして、今日、主権者である日本国民は、有権者でもあるのですから、政府が対中融和政策に傾かないよう、しっかりとその方向性を制御してゆかなければならないと思うのです。(おわり)
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