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2021-04-05 00:00
(連載1)北米のアジア系に対するヘイトの今
岡本 裕明
海外事業経営者
ヘイトクライム、つまり特定の属性(人種、性別、宗教…)に対する差別行為がここにきて北米で再び増えてきています。アメリカではアジア系へのヘイトクライムは20年3月から12月までの間に約3000件が報告されているとされますが、カナダではほぼ同時期に800件あったとされます。
このヘイトクライムの内容や報告数の計上方法はカナダとアメリカでは違うので一概には比較できないのですが、カナダと人口が10倍違うアメリカを単純比較するとカナダの方が悪そうだ、ということになります。ちなみに私は経験したことはありません。このところ、人が増えてきて電車に乗っていても日中ならやや安心感がありますが、夜の電車は6両全部の車両に両手で足りるぐらいしか人が乗っていないこともあり、そういう時に限ってかなり怪しげな乗客がいるものです。女性ならちょっと怖いと感じるのではないかと思います。
今般のヘイトクライムの引き金はトランプ氏の「武漢ウイルス」という特定表現にあると多くのメディアが主張しています。そうかもしれないし、やや誇張しているかもしれません。というのは英国で変異ウイルスが発生したのに英国を揶揄する表現は聞きません。そもそも白人同士で人種差別的な行為をするのは一部のエリアで部分的衝突はあるものの主要国同士ではあまりありません。カナダ人がアメリカ人を軽く軽蔑しているとか、英国人とフランス人の感性の違いからくるすれ違いといったものもありますが、人種差別問題として大々的に発展することはありません。(戦時中のユダヤ迫害は宗教的背景でヘイトクラムではなく政治的組織的背景を持つジェノサイドであったと理解しています。)とすれば「武漢ウイルス」→「中国」→「黄色人種への嫌がらせ」ということかもしれません。アメリカもカナダも日本人や中国人を迫害した戦前、戦時中の歴史的行為を政府レベルで認め、謝罪もしています。が、今でもそれが止まらないのは白人社会における潜在的意識の問題なのでしょうか。
今回はそもそも通商貿易問題でアメリカと中国が激しくやりあっていたさなかでのコロナ発生だったこと、中国はいち早くコロナ対策を行い経済の立ち直りが主要国では一番早かったことなどで怨嗟の引き金になったことはあるかもしれません。カナダについてはファーウェイの副会長がバンクーバーで拘留され、裁判の進捗発表のたびに中国側が批判的な声明を出します。一方、中国ではカナダ人を拘束しており、人質外交としてカナダ内では強烈な批判のネタとなり、カナダと中国の外交関係は冷え切っています。(つづく)
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