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2021-04-03 00:00
自由で開かれたインド太平洋会議を設立せよ
加藤 成一
元弁護士
安倍前首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、主として海洋における法の支配や航行の自由の原則並びに自由貿易による地域の繁栄を掲げ、日米豪の海洋国家の連携によるシーレーン防衛の重要性と、南アジアの大国インドの存在とを戦略的見地から結び付けたものである。同戦略は、米国が世界戦略を決定し、日本が追随するという従来型の政策決定パターンを戦後始めて逆転させた日本の画期的な外交戦略であり、安倍前首相の外交的実績と言えよう。同戦略の背景には、近年における軍事力を背景とした中国の恫喝的な海洋進出がある。南シナ海では国際法を無視した人工島・軍事基地建設、東シナ海尖閣諸島周辺海域では武装した中国海警船による領海侵入を繰り返えし、中国の領有権主張を既成事実化しようとしている。のみならず、中国は、「一帯一路」構想に基づく発展途上国に対する経済支配や、アジア、アフリカ諸国から戦略的要衝を獲得するなど、シーレーンの支配にも乗り出している。このまま推移すれば、オホーツク海がソ連の内海になったように、南シナ海が中国の内海となって要塞化され、やがて東シナ海、さらには西太平洋が中国の内海になる可能性も否定できないのである。そのような事態となれば、日米豪などの海洋国家にとって必要不可欠な航行の自由は深刻な打撃を受けることになる。
「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、このような軍事力を背景とした力による現状変更など、中国の膨張主義的政策に対応するものである。しかし、中国の不法な海洋進出などを日本が単独で阻止することは不可能であるから、「航行の自由作戦」など軍事面の役割は主として米国が担い、自衛隊など日豪がこれに協力し、日米豪の緊密な連携協力が不可欠である。懸念されるのはインドが必ずしも同戦略への参加に積極的でないことである。インドの伝統的な全方位外交や、中国への貿易依存度の高さがその要因と考えられるが、「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、インドにとっても航行の自由や海洋の安全保障並びに自由貿易等による利益をもたらすものであるから、粘り強く説得すべきである。さらに、英国などの海洋国家の同戦略への参加も実効性を高め極めて重要であるから、日本政府は英国などの海洋国家との連携を強化し、同戦略への参加を促すべきである。
「自由で開かれたインド太平洋戦略」の今後の重要課題は、例えば、「自由で開かれたインド太平洋会議」及びこれを国際法的に裏付ける「自由で開かれたインド太平洋条約」のような、参加各国の恒常的な協議機関を早急に設立し、且つ、国際法的な枠組みを早急に確立することである。日本外務省は米国国務省等と早急にそのための協議を開始すべきである。同会議は、航行の自由作戦、海洋の安全保障、自由貿易、経済協力、人材育成などを具体的に協議して実行に移すなど、参加各国の連携や協力を一層強化するために極めて重要である。
なお、将来、万一、中国が孤立化を恐れて、海洋における法の支配と航行の自由の原則を認めたうえで、「自由で開かれたインド太平洋会議」及び「自由で開かれたインド太平洋条約」に参加を要請してきた場合は、上記原則を厳守するなどの厳しい条件付きで、米豪など参加各国の承認を得たうえで、参加を認めるべきであろう。なぜなら、中国を参加させることによって、中国を取り込み、参加各国の圧力により、中国の海洋における膨張主義的政策を抑制し変更させる可能性も生じ得るからである。安倍前首相も、中国を刺激しないためではあるが、平成30年1月22日の施政方針演説において、同戦略について「中国とも協力して」取り組んでいくと述べている。外務省も「同戦略に賛同すれば、日本はいずれの国とも協力していく」との立場である。「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、いわゆる「中国包囲網」を超越した、21世紀の「自由と民主主義」を基調とする共存共栄のグローバルな世界戦略であることを日本政府はさらに力強くアピールすべきである。
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