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2021-03-29 00:00
(連載1)サステナブルファイナンスのための国際ルール形成
鈴木 馨祐
前外務副大臣
私が財務金融部会長としてメンバーとともに作成を主導してきた提言の趣旨についてここで書かせていただきたいと思います。背景としては、①リーマンショック以降、欧米を中心にそれまでの短期主義、いわゆるQuarterly Capitalismへの批判や反省が生じたこと、②2015年以降、特に気候変動に伴う「物理的リスク」と「移行リスク」が企業のビジネスの持続可能性、金融・経済の安定に極めて深刻な影響を与えるとの危機感が高まり国際的にもTCFDなどの場でルールに関する議論が進んできた、という流れがありました。そうした中で、我が国においても菅総理が10月に2050年カーボンニュートラルの実現を目指すと明言され、またアメリカでもバイデン政権の発足に伴い、こうした動きが加速する地合いにあったところです。
こうした中で、言ってみれば、資本主義、キャピタリズムにおける収益というものが短期に偏りすぎていたものを、長期的収益をベースとしたものに論理的に再構築するといった取り組みが今回の提言の趣旨です。もちろん短期の投資家が多数であることは事実ですが、年金のように長期で運用せざるを得ない巨大なアセットオーナーを中心に、機関投資家もこうした長期の収益を軸とした動きに向かいつつある実態があります。その際、長期の投資家が気にすべきは投資先の将来の業績ですが、これまでの財務情報はいわば過去の業績のデータです。そこと将来の業績を橋渡しするのが非財務情報であって、この開示が一つのカギとなるというこれまでの議論の流れがあります。また日本においては間接金融が大きな役割を果たしていますので、金融機関というものに着目した枠組みも必要です。こうした枠組みを整備することで、経済の強靭性、長期的な安定を実現する好循環を創っていくことが重要です。
これまでも様々な議論がされてきたサステナブルファイナンス、ESGの分野ですが、特に今年は、この一連の流れをある意味で主導してきたマーク・カーニー前イングランド銀行総裁が国連と英国首相のアドバイザーとなり、その英国や欧州がG7、G20、COP26等の国際会議の議長国を務めること、あるいはこれまで林立してきた企業の情報開示についてその収斂を図るべくIFRS財団において議論が始まっていることなど、こうしたルール作りにおいて極めて重要な年であり、かつこれまでルールづくりへの関与の意味では出遅れが目立ってきた日本が国際ルール形成に関与するある意味で最後のチャンスでもあるわけです。
そして、国際ルール形成の場で日本が積極的に関与するためには、日本国内においてもしっかりとしたエコシステムが確立されていることが重要です。こうした問題意識の下で、私が部会長を務めている財務金融部会として、政府への提言を提出する準備を進めてきたわけです。主な具体的な項目として、次の7点があります。(つづく)
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