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2021-03-17 00:00
(連載1)海警法と尖閣諸島実効支配の危機
斎藤 直樹
山梨県立大学名誉教授
2021年2月1日に中国海警法が施行されて以降、中国の海洋活動はこれまでに増して過激かつ横暴になっている感がある。海警法は特段、わが国の尖閣諸島を念頭に置いたものでないにせよ、尖閣諸島の領有は日々、中国に脅かされつつあるのが現実である。そもそも中国海警局が国家海洋局に設置されたのは2013年であった。表向き上、海警局はわが国の海上保安庁に相当する沿岸警備組織である。海上保安庁は海上保安庁法により武器の使用が厳格に規制されている。これに対し、海警局は2018年に中国人民解放軍の最高指導機関である中央軍事委員会に直属する人民武装警察部隊に配属替となった。これにより、海警局は軍に準ずる組織の性格を持つに至った。このことは、海警局がしばしば「第二海軍」と呼ばれていることにも表れている。また海警局が保有する船舶は海上保安庁の巡視船とは比較にならないほど大型であり、その排水量は1万トン級に及ぶとされる。しかも2021年1月22日に全国人民代表大会で中国海警法が採択され、2月1日に施行となった。海警法は曖昧な表現で中国の主権や管轄権を侵犯するものに「武器の使用を含むあらゆる必要な措置」を講ずる権限を一方的に海警局に認めた。
ところで、尖閣諸島がわが国固有の領土であるというのは、日本政府だけでなく与野党一致した見解である。日本が尖閣諸島の領有を主張する主な根拠は、1985年1月に日本政府が閣議決定を行い沖縄県に尖閣諸島を編入して以来、1940年頃まで日本国民が居住し、羽毛の採取など経済活動を行っていたことによる。これに対し、中国側の根拠は乏しいと言わざるを得ない。明時代の古文書(「使琉球錄」や「籌海圖編(ちゅうかいずへん)」)に「釣魚嶼」(尖閣諸島)という記載があると中国は主張するが、下記の通り突然、領有を主張し出したのは1971年であり、それまで尖閣諸島の領有に執着していたわけではない。ところが、1969年に国連の海洋調査により近接海域に膨大な量の石油が埋蔵していることが確認されると、中国は71年に外務省声明を通じ尖閣諸島の領有を突如、主張し始めた。ところで、尖閣諸島の領有を脅かす中国の動きが特に顕著になり出したのはコロナ禍下の2020年4月頃からである。これ以降、海警局船舶は尖閣諸島の領海の外側の接続水域にそれこそ連日のように侵入したのに加え、同領海への侵入を繰り返した。接続水域への侵入は2020年だけで333日間に達した一方、領海侵入は29日間に及んだ。しかも尖閣諸島の領海内で操業していた漁船が海警局船舶に追い回わされるという事件が6件も起きた。海上保安庁の巡視船が出動して警備にあたり事なきを得てきたが、それにしても日本政府の反応は決まって鈍い。
こうした状況が続けば、遅かれ早かれ習近平指導部が力づくで尖閣諸島の実効支配に打って出るであろうと、以前から懸念されてきたことである。しかも2020年8月には中国の漁船が大挙して尖閣諸島周辺海域に押しせるのはないかと危惧された。『産経新聞』は8月16日以降、多数の中国漁船が同海域に侵入する可能性があると伝えた。同報道によれば、8月16日の中国の休魚期間が終われば、中国漁船が同海域での漁業を開始することを通告してきたとされる。最悪の事態としてこのどさくさに紛れて尖閣諸島に中国側が上陸するのではないかと懸念されたが、中国漁船が大挙して押し寄せるといった事態は回避された。この背景には、8月15日から18日の間、東シナ海などで大規模な日米合同軍事演習が実施されたことが牽制となったと言えよう。
その後、尖閣諸島の領有を脅かす習近平指導部の動きを警戒する菅首相は2020年11月12日にバイデン次期大統領と電話会談を行い、尖閣諸島は日米安保条約の適用対象であることをバイデン氏が確認したとされる。とは言え、同条約の適用を確認したから、尖閣諸島の領有は安泰と考えるのは早計である。実際に2021年2月1日の海警法の施行以降、海警局船舶が尖閣諸島周辺海域へ侵入を繰り返しているのは警戒を要する。2月だけで尖閣諸島の領海外側の接続水域に海警局船舶が侵入したのはのべ26日間、尖閣諸島の領海への侵入は6日間に及んだ。しかもこの間、わが国の漁船が海警局船舶に追い回されるという事件が1月に1件、2月に3件も発生している。2月16日には、わが国の二隻の漁船が四隻の海警局船舶によって追い回されたが、その際、海警局船舶の1隻は機関砲らしきものを装備していたとされる。(つづく)
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