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2021-02-20 00:00
北朝鮮・中国と女性の人権
荒木 和博
特定失踪者問題調査会代表
先日、森元総理大臣が、女性が参加すると会議時間が長引くというような発言をしたとして、五輪委の代表理事を引責辞任しました。このニュースについては、フォローしていませんから、森喜朗氏の失言の是非については、ここでは論じません。しかし、国内外の人々がこれほどにまで女性の人権や男女差別といったものに本当に関心を寄せているのならば、なぜ言葉だけでなく本当の意味で女性たちが蹂躙されている中国や北朝鮮の人権状況については無関心なのでしょうか。もっと真剣にこの問題に日本の人々も世界の人々も取り組んでもいいとおもいます。
2月7日に東広島でシネマフォーラムを開催し、そこで「クロッシング」という2008年制作の韓国映画を上映しました。その映画には、中国から北朝鮮に連れ戻された人々が集められる集結所に、中国で妊娠したあと連れ戻されて虐待される女性が出てきます。この女性の描写は本当にちょっとしかないので、気づかない人もいたかもしれませんが、これは脱北女性がかなりの割合で性的虐待を受ける運命にあることを示している極めて意味深いシーンです。中国へと脱北した女性は、売り飛ばされたり虐待された末に妊娠し、北朝鮮に送還されると中国人の血を入れたとして強制堕胎させられるといった酷い扱いを受けます。これは、数多くの実例が報告されている間違いのない現実の出来事です。これについて、日本の世論が動いたり、マスコミが徹底的に報道したり、政治家や政府が非難したりしたことがあったでしょうか。私が知る限りそういったことはありません。
中国は、ウイグルやチベットといった少数民族の住む地域で、事実上の民族浄化、エスニック・クレンジングを行っています。中国当局がウイグル人女性がウイグル人同士で子供を作れないようにしたり、少数民族文化を継承できないように再教育を施したりしています。中国政府はエスニック・クレンジングを強く否定していますが、これも国際的に非常に有名になっています。かなりの確度で女性、少数民族への人権侵害がなされているといってよいでしょう。こういうことをやっている中国共産党が、来年には北京オリンピックを開催します。森氏が言葉の上で女性を差別したことで辞任せしめるのが日本人のメインストリームであるのならば、当然少数民族の女性を蹂躙する中国政府が主催する北京オリンピックはボイコットするべきでしょう。ですが、実際には、マスコミはそういうことを積極的に報道しませんし、市井からもそういう声は上がってきませんから、わかっている人、声を上げられる人が、訴えていくしかありません。
これは、拉致問題もそうです。非常に危険な人権侵害が国家規模でなされているのにも関わらず、長らく政府もマスコミも認めてきませんでした。事実が確認されたあとも、「70年代80年代のごく限られた時期に起きたわずかな被害の出来事ですよ」とされて人々はそれを信じました。今でも報道では、17人の拉致認定で終わった過去の話というような言われ方がされていますが、そんなものは真実ではありません。長く行われてきたことですし、これからも起きうる人権侵害です。今回の失言問題をけしからんと思った方には、これを機に現実の人権蹂躙にもっと関心を持っていただきたいですし、メディア・リテラシーというものも意識していただきたいのです。
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