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2021-02-07 00:00
(連載1)言論の自由とマスコミ統制・自粛・忖度
李 鋼哲
大学教員
最近、新型コロナ禍の中で言論の自由とマスコミ統制問題がクローズアップされている。共同通信によると、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)は2020年4月21日、2020年の世界各国の報道自由度ランキングを発表した。対象の180カ国・地域のうち、日本は前年から1つ順位を上げ66位となったが、メディアの編集方針が経済的利益に左右されると改めて指摘された、と報道された。新型コロナウイルスの大流行に絡み、オルバン政権が強権的な姿勢を強めるハンガリーは順位を2つ下げ89位。情報統制を敷く中国は177位のままだった。感染者はいないと主張する北朝鮮は179位から再び最下位へ1つ落ちた。1位は4年連続ノルウェーで、フィンランド、デンマークがそれに続く。米国の順位は48位から45位に上がったという。以上のランキングと関連して言論の自由が各国でどのように保証されているのか、または統制されているのか、筆者の関心はそこにある。
そもそも、現代のほとんどの国家では憲法により「言論の自由」が保証されている。自由度が一番低い共産党の独裁国家である北朝鮮や中国でも憲法では「言論の自由」や「出版の自由」、「集会の自由」などが保証されているはずだが、実態は甚だ「違憲」状態ではないだろうか?しかし、権力が憲法を踏みにじることができる権力構造の国であるため、「違憲状態」をチェックできるはずがない。だからといって民主主義諸国ではどうであろうか?日本は先進国であり民主主義国とは言え「言論の自由」が保証されているとは言い切れない。筆者はゼミ生に課題を出して日本の「報道の自由度」を調べさせた結果、66番目であることが分かった。ただし、調べる前に何人かの学生からは「先生、ランキングは後ろから数えた方が早いんじゃないですか?」と冗談めいて言ってきたので、ちょっとびっくりした。普段は新聞をあまり読んでいない若い学生でさえそう感じるのだから。
最近、コロナ禍に関する情報に対しても民衆からの疑心暗鬼の声が聞こえる。ある事件をきっかけに筆者はそのような不信感には裏付けがあると確信した。先月、北陸大学の隣の金沢大学(国立大学)の准教授がコロナ禍で死亡したと、本大学の職員から立ち話で聞いた。「えー、そんなこともあるの?」とびっくりし、すぐインターネットで調べてみたら、このような記事が見つかった。42歳の若い教員で、11月中旬ころに体調を崩し病院でインフルエンザと診断され、薬をもらって自宅療養していた。熱は多少下がったが治らなかったので、保健所に2回電話をしてPCR検査を希望したが、医師の診断なしでは検査を受けられないと、同じ回答を得たという。単身赴任だったので、奥さんがSNSで連絡しても返事がなく、大学の職員に連絡して確認を依頼したところ、死亡していることが見つかった。もともと喘息があったが、死亡後のPCR検査で新型コロナと判定されたという。このような事件は重要な報道の種になるはずだ。ところが、新聞にもテレビにもほとんど報道されず、事件発生10日後に北陸中日新聞に次のような短い記事が載っただけであった。
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【2020年12月5日:北陸中日新聞】
インフルエンザとの同時流行に備え、石川県内では先月、新型コロナウイルスと双方の検査に対応できる指定医療機関が180カ所まで拡充されていた。先月26日の死亡確認後に新型コロナ感染が分かった金沢大准教授の高橋広夫さん=享年42=は、整備されたはずの新たな体制の中で、検査を受けられなかった。
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全国的には同じ系列の東京新聞に掲載されているものの、これだけでは、地元の多くの人にさえ知らされていない。大きく報道されなかったのは大学側の隠蔽なのか、行政側の忖度なのか、その裏のことは知るすべがない。このような事件はマスコミが取り上げ、行政側に対して責任を追及するのが民主主義国家のメディアではなかろうか?同じような隠し事や過小報告が他の地域にもあるのではないか?知り合いの有識者たちの話を聞くと、政府が意図的に隠しているのではないかと疑心暗鬼だ。報道の自由が制限されているのか、あるいはメディア側が自粛や忖度をしているのか、それとも両方なのか?報道の自由度ランキングが66番目の実態が実証できる一つの事例である。(つづく)
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