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2021-02-06 00:00
(連載1)バイデン時代の台湾のゆくえ
岡本 裕明
海外事業経営者
トランプ氏が先鞭をつけ、評価できるレガシーの一つに米台の直接対話があります。そしてアメリカによる武器の売却が行われました。実はアメリカと中国の間には、台湾への武器売却などについては1982年に取り決めが行われています。この取り決めは「8.17コミュニケ」と称するもので時のトップ、レーガン大統領と鄧小平最高指導者の間に交わされたもので、その中の6番目の項目には「米国政府は台湾への武器売却を長期的政策として実施するつもりはないこと、台湾に対する武器売却は質的にも量的にも米中外交関係樹立以降の数年に供与されたもののレベルを越えないこと、及び台湾に対する武器売却を次第に減らしていき一定期間のうちに最終的解決に導くつもりであることを表明する」とあります。つまりこれだけ読めばトランプ氏が台湾に武器売却をすることはできないように読めます。
ところがこの「8.17コミュニケ」に関しては、この本体とは別に機密文書がリンクされており、昨年までその事実は一般には秘匿されていました。が、昨年8月に米国在台湾協会(AIT)がこれを公開、その中に「中国がより敵対的な態度を見せた場合は、(台湾への武器売却についての約束を)無効にする」(日経)とあるわけです。トランプ氏は中国が敵対的態度を示したことで8.17コミュニケの第6項目を無効とし、武器売却を進めているわけで行動の正当性はそこに存在します。
さて、バイデン政権になれば米中関係はトランプ氏の時ほど先鋭化しないのではないかという見方が現時点では専門家の間では主流ですが、その「弱腰イメージ」を試すような行為が中国によって行われました。23日、24日と二日続けて中国は台湾の防空識別圏に戦闘機をそれぞれ13機、15機進入させました。これを受けてアメリカ国務省が「台湾が十分な自衛能力を維持するよう支援していく」(日経)と発表しました。これはとりもなおさず、中国に対して「甘く見るな!」という警告であります。
アメリカは台湾に対してどこまで本気なのでしょうか?私はバイデン政権も継続してテコ入れをする気はあるとみています。中国が太平洋進出を図るにおいて「第一列島線」が意識されてきました。これは中国側の軍事上の作戦であり、九州から台湾、フィリピンに至る線であり、あくまでも太平洋進出というより台湾を意識した線であると考えてよいかと思います。北海道の北側とか津軽海峡という抜け道が物理的には存在しますが、それを考えるのは野暮であります。とすれば中国が台湾を意識するのは台湾を「一つの中国」で括るという意味と防衛上という二つの目的が重なり合っているとも言えます。(つづく)
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